トップ > カルチャー >  九州・沖縄 > 長崎県 >

長崎電気軌道の戦災や災害からの復旧の早さ

そうした長崎電気軌道の事業者としての使命感は、これまでの歴史のなかにも垣間見ることができます。

昭和20(1945)年8月9日の原爆による被害は甚大なもので、車両の多くが失われて全線不通となりました。従業員も大勢が犠牲となりましたが、残った者たちは「電車の運行再開が復興の足がかりになる」と信じて復旧に全力を傾注。わずか3か月半で市中心部分の復旧開通にこぎつけています。

長崎電気軌道の乗務員の尽力

原爆に続く大きな災害となった昭和57(1982)年7月の長崎大水害でも全線運休に追い込まれたものの、乗務員の懸命な乗客誘導と車両防護によって、乗客と従業員に死傷者は出ませんでした

冠水による被害は大きかったですが、やはり総員の努力で3日後に1号と3号系統で運行を再開させたのです。

長崎電気軌道の多種多様な車両に注目!

そして、鉄道愛好家たちの間で「動く電車の博物館」などと呼ばれて、長崎電気軌道の大きな魅力とされているのが、じつに多種多様な車両が線路を行き交う点。

東京都交通局、箱根登山鉄道、熊本市交通局、仙台市交通局、西日本鉄道など、引退組も含めて全国各地から譲り受けた車両が多いのが特徴です(一部はすでに廃車・譲渡済み)。

なかでも元西鉄の160形(168号)は、明治44(1911)年に製造された、日本最古の木造ボギー車(車体に対して水平方向に回転可能な台車を装備してカーブを通過しやすくした車両)で、現在は記念日のみ運行されている珍しい電車です。

長崎電気軌道は新旧の車両がひとつの路線を走る貴重な存在

古参車両ががんばる一方で、ベビーカーや車いすが乗降しやすい超低床式電車の5000形や、JR九州の「ななつ星in九州」などで知られる水戸岡鋭治氏がデザインを手がけた310号「みなと」といった新型車両も同じレールを走ります。

また、2020年にリニューアルされたイベント電車「あかり」は、夏はビール電車、冬はおでん電車として運行予定です。

歴史遺産級の車両と最先端車両をひとつの路線で味わえるのは、長崎電気軌道だけだといわれています。

『長崎のトリセツ』好評発売中!

地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から長崎県を分析!
長崎県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。長崎の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。地図を片手に、思わず行って確かめてみたくなる情報満載!

Part.1 地図で読み解く長崎の大地

・地殻変動と火山が生んだ唯一無二の景観! 海に囲まれ平地が少ない長崎の地形
・島の数971! 長崎は日本一の多島県
・火山活動が作ったダイナミックな地形! 島原半島ジオパークとは?
・長崎は江戸時代から埋立都市だった?
・「国境の島」対馬の特殊な生態系
・水中調査で解明! 横島沈没の謎
・国内初のティラノサウルス発掘! 長崎は白亜紀の化石の宝庫だった
・世界でも稀な西海市の七ツ釜鍾乳洞
・最先端をゆく五島の洋上風力発電

…など

Part.2 長崎に開かれた多彩な交通網

・初期の長崎本線は早岐経由だった
・新幹線開業に向け再開発中! 長崎駅の今昔
・新旧の車両が行き交う長崎電気軌道
・小島が国際空港に! 長崎空港は世界初の海上空港
・長崎が生んだ画期的な交通手段! 坂を上る日本初のエレベーターとは!?
・東洋一と称された西海橋の誕生
・進化を遂げた長崎街道の日見峠
・松浦鉄道には3つの日本一がある!?
・当時の面影が残る雲仙鉄道の廃線跡
・島原鉄道は奇跡のローカル線!?
・吉田初三郎が描いた 長崎の鳥瞰図

Part.3 長崎で動いた歴史の瞬間

・東アジアの一大交流拠点だった! 原の辻遺跡が語る古代の交易
・“神風”の謎が海底遺跡調査で判明!? 鷹島神崎遺跡から見る蒙古襲来
・ポルトガルが平戸で貿易を始めたワケ
・なぜ長崎は教会領になったのか
・町民が主役!? 特例だらけの貿易都市長崎の誕生
・ラクダを飼っていた!? オランダ人の出島生活の実態とは
・龍馬を襲った「いろは丸事件」の真実
・倒幕の裏には大村藩士の活躍があった
・人口約4000人の村が一変!? 寒村だった佐世保が大変貌したワケ

…など

Part.4 長崎で生まれた産業や文化

・印刷も写真も通信も長崎発祥!? 長崎は“日本初”を量産していた!
・世界遺産に登録された日本造船業の原点! 三菱長崎造船所のあゆみ
・細部まで技巧を凝らした圧巻の建築美! 数々の教会堂を手がけた鉄川与助とは
・テーマパークの枠に留まらない魅力に迫る! 進化するエコシティ ハウステンボス

『長崎のトリセツ』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!