五島が風力発電実証地に選ばれた理由
五島列島が洋上風力発電の実証フィールドに選ばれたのには2つの理由があります。1つは椛島沖の海域が海上80mで年間を通して強い風が吹くこと、もうひとつは島近くの水深が100m以上あることです。
風力発電は同じ能力の設備であれば、風速が速いほど発電量は増えます。風力の問題では、一般的に平均風速が7m/秒で設備利用率(発電能力に対する年間発電量の割合)は30%程度を見込めます。
水深の問題では、水深が浅い場所ほど海面に発生する波は高く盛り上がる特性があります。浮体式の洋上風力発電では、高波による設備の揺れが安全性や耐久性に影響をおよぼすため、一定以上の水深がある場所が望ましいとされています。その目安が100mで、椛島沖はその条件を満たしていました。
五島の海洋エネルギー実証フィールド
五島列島は海洋再生可能エネルギーの宝庫。洋上風力発電のほか、奈留島沖合では潮の干満によって起こる海水の流れを利用した「潮流発電」の実証プロジェクトも進行しています。
五島の風力発電による漁業への影響
建設前の最大の課題は、漁業に対する影響でした。実証事業の対象海域は椛島から約1㎞の沖合にあり、共同漁業権が設定されています。洋上風力発電設備を建設するにあたっては、地元漁業協同組合に十分な説明をし、事業に対する理解を得ながら進められました。
しかし、漁業への影響の点では、むしろプラス面が表れました。浮体の表面に付着した海藻が小さい魚を呼び、それを追って大きな魚が集まってきたのです。
五島の風力発電の現在
現在、福江島の沖合5kmの海域には、日本で初めて商用化に成功した浮体式の洋上風力発電所が運転しています。椛島沖の実証事業は2015年に終了しましたが、洋上風力発電が地域の産業振興に効果を見込めることから、2016年3月に崎山沖で商用運転を開始したのです。
風車の回転直径は80m、最大で2MW(メガワット)の電力を海底ケーブルで福江島に送っています。海に浮かぶ発電設備の総重量は3400t。巨大な風車を支える浮体は円筒形の構造物で、強風を受けても転覆しません。
五島の風力発電拡大プロジェクト
2019年、五島市は国から再エネ海域利用法に基づく促進区域に選定されました。現在浮体式洋上風力発電の拡大プロジェクトが進んでおり、最大10基の風車設置をめざしています。
大規模発電が実現すれば、コスト削減だけでなく、それにともなう水素製造により、新たな代替エネルギーとして燃料電池や水素漁船などへの活用も期待されます。
五島市では洋上風力発電のほかにも潮流発電、バイオマス発電、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入を次々と進めており、「エネルギーの島」として持続可能な発展を実現させようとしています。
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