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金田城の恵まれた立地条件

浅茅湾はリアス海岸が発達し、複雑に入り組んだ海岸線が続いているため、外敵が侵入しにくいところです。さらに、標高273mの城山(じょうやま)に築かれた金田城は三方を山に囲まれたうえに、北西方面は峻険で、天然の要害となっていました。

加えて、頂上からは対馬の西方海上の朝鮮海峡を広く見渡すことができます。このように金田城は、対外防備の山城として格好の条件を備えていたのです。

金田城周辺の立地

金田城周辺の立地

城山の金田城は石塁で囲まれ、東側に3つの城戸が設けられました。頂上からは西方の朝鮮海峡が見渡せます。向かい側には鶴ヶ岳が迫り、黒瀬湾の入り口が狭く進入しづらくなっています。

金田城が国の特別史跡に指定

金田城は800年頃に一度役目を終えましたが、築城からおよそ1000年後の江戸末期から明治時代にかけて、国防の拠点として再び機能しました。

明治時代の日露戦争時には、城山に砲台を築き要塞化。陸軍の軍事拠点となり国防の第一線に立たされました。城山内には城山砲台の砲座や棲息掩蔽部(せいそくえんぺいぶ)(弾薬庫)も残っており、古代山城と近代要塞が並存しています。

国防の最前線に築かれた金田城の重要性と良好な遺存状況を踏まえ、昭和57(1982)年、国の特別史跡に指定されました。

金田城は朝鮮式山城

天智6(667)年に築かれた金田城は、百済人の知恵と技術を生かした朝鮮式山城です。天然の絶壁を利用した山頂の周囲には石塁(せきるい)(石垣)が巡らされています。

当時、対馬には先の白村江の戦いで敗れた百済人が移住してきたと考えられており、金田城は彼らの指導のもと築かれた可能性が高いといわれています。石塁には城山で産出される石英斑岩(せきえいはんがん)が使用され、大きいものは1m以上にもおよびます。

金田城に残る水門跡

築城してから1300年以上が経ちますが、金田城には山を取り囲むように築かれた石塁が遺り、長さは約2.8㎞におよんでいます。城壁の高さは低いところで2〜3m、高いところで4〜5m、谷部では6〜7mに達しています。

3つの谷を塞ぐように石積がなされ、谷間には巨石で構築した城戸(きど)(城門)が3か所設けられました。これらは一ノ城戸、二ノ城戸、三ノ城戸と称されています。一ノ城戸と三ノ城戸には、水圧による崩壊を防ぐための水門が設置され、今も水門跡が確認できます。

金田城の発掘調査と防人

金田城が築城された時代、城の守りについたのは防人です。防人は金田城近辺を警護するために東国から派遣されました。東国とは、遠江(静岡県西部)以東の現在の関東地方で、故郷に妻子を残しての単身赴任でした。

金田城の調査・発掘では、二ノ城戸と三ノ城戸の中間地点で防人が使用したと見られる掘立柱(ほったてばしら)建物跡も発見されています。また、その周辺で金田城唯一の土塁や門礎石も見つかっており、このあたりが城の中枢だったと推測されます。

発掘調査と同時に見学ルートの整備が進められ、現在、金田城周辺には3つの散策コースが設けられています。山頂からは、防人が故郷を思いながら眺めたであろう浅茅湾の絶景を望むことができます。

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