目次
笠岡にカブトガニが棲めなくなった理由
1928(昭和3)年、生江浜(おえはま)がカブトガニ繁殖地として国の天然記念物に指定されました。さらに1971(昭和46)年には神島水道(こうのしますいどう)が追加指定とされました。
海と山に囲まれた笠岡市は、江戸時代から海を干拓することで土地を広げてきた歴史を持ちます。1966(昭和41)~1990(平成2)年までの笠岡湾の大干拓事業で湾の大部分が干拓されました。その広さは1841ha(東京ドーム約382個分)、笠岡市の耕地面積の60%相当にもなります。
ほとんどが陸になり、狭い水路のように変化した笠岡湾では、家庭排水などが流れ込み、どんどん水質が低下していきました。さらに、この干拓により、後に生江浜が天然記念物から指定解除されました。天然記念物に指定されていたにもかかわらず干拓を決行したのは、当時はカブトガニの保護よりも人々のために広い農地が必要だったためと考えられます。そのためこの地に昔から生息していた多くのカブトガニは、棲む場所を奪われることとなってしまいます。
笠岡のカブトガニを保護する取り組みが始まる
危機に瀕したカブトガニを保護するため、官民一体となり「生態調査と人工飼育の研究」と「棲みやすい環境の整備」への取り組みが始まりました。
笠岡のカブトガニを救え!①:人工飼育
1990(平成2)年、笠岡市に世界で唯一の「カブトガニ博物館」が誕生。カブトガニは成長速度が遅く、成体になるまでに10年以上かかるといわれています。人工で飼育するのは難しいと考えられてきましたが、以前から続けられていた地道な研究が実を結び、世界で初めてカブトガニの卵から成体までの人工飼育に成功します。1995(平成7)年からは人工飼育した幼生の放流も実施し、現在では年間約1万匹を放流しています。
笠岡市立カブトガニ博物館
- 住所
- 岡山県笠岡市横島1946-2
- 交通
- JR山陽本線笠岡駅から井笠バスカンパニー外浦・寺間行きで13分、カブトガニ博物館前下車すぐ
- 料金
- 大人520円、高校生310円、小・中学生210円(市内在住の小・中学生無料、団体20名以上は大人420円、高校生260円、小・中学生150円、65歳以上証明書持参で無料、障がい者手帳持参で無料)
笠岡のカブトガニを救え!②:環境の整備
環境の整備としては、下水道整備の促進や、大学や企業などとの連携による海水浄化船での海水のろ過実験なども行われました。こうした取り組みにより水質も以前に比べて改善され、生息地とカブトガニを守るための保護条例を2003(平成15)年に制定しました。
笠岡にカブトガニが戻ってきた!
官民挙げた努力が実り、干潟で見られるカブトガニの数は増え、繁殖地内での自然産卵も毎年見られるようになりました。今後も戻ってきた環境とカブトガニを守るための活動の継続が重要だと考えられています。
【番外編】カブトガニの血液
「カブトガニの血液は何色か?」。一般的には青色といわれていますが、実際は透明がかった乳白色。カブトガニの血球中には「ヘモシアニン」という物質があり、それが酸素に触れることで酸化し、私たちの目には青色に映るのです。また、カブトガニの血液には菌などに反応して凝固する(固まる)特性があることから、医療の現場で試薬として活用されています。
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岡山県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。岡山の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!
Part.1 地図で読み解く岡山の大地
・瀬戸内海はどうやってできた?岡山県の成り立ち
・美作はなぜ西日本有数の温泉地なのか
・岡山県指定天然記念物井倉洞はどうやってできた?
・山から貝の化石がとれる不思議
・その大きさは世界2位! 児島湖はなぜ造られたのか?
・「晴れの国岡山」は「天文王国おかやま」だった!
・笠岡市がカブトガニ有数の生息地になった理由
…などなど岡山のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 岡山を走る充実の交通網
・瀬戸大橋が鉄道と併用できた理由
・西日本唯一の臨海鉄道線「水島臨海鉄道」の変遷を知る
・わずか16年で廃線になった、幻の三蟠鉄道
・津山扇形機関車庫から見る、岡山県の鉄道の歴史
・山陽新幹線は岡山発が多い?交通の要所・岡山駅のスゴさ
・日本で最も短い路面電車が地元で愛される理由
…などなど岡山ならではの鉄道事情を網羅。
Part.3 岡山で動いた歴史の瞬間
・伝説の城「鬼ノ城」は古代日本の防衛ラインだった
・巨大古墳群からひもとく吉備国と大和朝廷の関係
・戦国大名・宇喜多直家は、邑久郡の小領主だった
・難攻不落の備中高松城を、血を流さずに攻め落とせ!
・宇喜多秀家が基礎を築き池田家が整備した城下町
・岡山藩藩主の憩いの場として築かれた大庭園・後楽園
…などなど、激動の岡山の歴史に興味を惹きつける。
Part.4 岡山で生まれた産業や文化
・古墳時代から受け継がれる備前焼
・岡山県の名産品・白桃は、なぜこんなにおいしいのか?
・蒜山原野の開拓とジャージー牛導入の歴史
・養蚕・イグサ・綿・デニム…。岡山が誇る繊維業
・瀬戸内工業地域・水島コンビナートの誕生秘話
・倉敷市が一大観光地に成長した理由
・刀工集団・長船派は、どのようにして生まれたのか
…などなど岡山の発展の歩みをたどる。
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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
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