栃木で雷が多く発生する理由を地形からみる
ではなぜ栃木県にこれほど雷が発生するのでしょうか。栃木県全体を俯瞰(ふかん)すると、東部に600~1000mのなだらかな山塊が続く八溝(やみぞ)山地があり、中央部には関東平野へ続く平地が南東方向に広がっています。そして北西部には、男体山(なんたいさん)や白根山に代表される日光火山群、鶏頂山(けいちょうざん)や釈迦ケ岳(しゃかたけ)などの峰々を持つ高原(たかはら)火山、主峰・茶臼岳(ちゃうすだけ)や朝日岳、三本槍(さんぼんやり)岳が連なる那須(なす)火山群といった1500~2000m級の山々がそびえ立ちます。
栃木県には多くの扇状地 や河岸段丘が形成されている
さらに北西部の山域からは、栃木県を代表する3つの河川が流れ出ています。日光市奥鬼怒(おくきぬ)を源流とし、県中央部を流れ利根川に合流する鬼怒川。那須岳を水源とし、八溝山地を横切り茨城県から太平洋に注ぐ那珂(なか)川。そして渡良瀬(わたらせ)川は足尾(あしお)山地を源とし、栃木と群馬の県境を流れ、渡良瀬遊水地を経て利根川に合流します。これらの火山群や河川が噴火や浸食で大量の土砂や礫(れき)を堆積させたことで、栃木県には多くの扇状地(せんじょうち)や河岸段丘(かがんだんきゅう)が形成されました。さくら市で見られるうねうねとした喜連川(きつれがわ)丘陵や、那須野が原のような広大な扇状地を目にするのはそのためです。
栃木に雷が多発するのは特有の地形によるもの
実はこの栃木県特有の地形にこそ、雷が多発する秘密があります。よく晴れた日の日中、南東方面に向かって開けた斜面がたっぷりと日ざしを浴びると、そこに強い上昇気流が発生します。さらに夏には、太平洋上から吹き込む湿った南風が北西部の壁のような高山にぶつかり、大量の積乱雲を発生させます。これが栃木県に雷が多発する理由なのです。
雷を発生させる栃木の地形①:男体山
日光火山群に属し標高は2486m。関東有数の高山でほぼ円錐状をした成層火山。奥日光の景観のほとんどが男体山の火山活動によってつくられました。
雷を発生させる栃木の地形②:高原山
標高1795m。栃木県北部に位置し、南側の釈迦ヶ岳火山群と北側の塩原火山群の総称。鶏頂山、西平岳、中岳、釈迦ヶ岳の主峰群と美しい裾野を持ちます。
雷を発生させる栃木の地形③:茶臼岳
那須岳ともいわれる標高1915mの活火山で、今でも噴煙を上げる那須火山群の主峰。1410年前後の噴火では火砕流を噴出し180名余りの犠牲者を出しました。
雷を発生させる栃木の地形④:渡良瀬遊水地
茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県の4県にまたがる、日本最大の遊水地であり、本州以南で最大の低層湿原。絶滅危惧種を含む希少な動植物の生息地でもあります。
雷を発生させる栃木の地形⑤:八溝山地
茨城県の筑波山から栃木県、福島県南部まで南北約100㎞、東西約25㎞の細長い範囲に広がる。北部の八溝山(1022m)が最高峰で、山頂にあるのは八溝嶺神社。
『栃木のトリセツ』好評発売中!
地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から栃木県を分析!
栃木県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。栃木の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。地図を片手に、思わず行って確かめてみたくなる情報満載!
Part.1 地図で読み解く栃木の大地
・雷が多い理由は地形にあり!
・奥日光は男体山がつくった?
・日本最大の渡良瀬遊水地ができた理由
・川を横切る川!? 不毛の扇状地を潤す那須疏水
・奈良の大仏に那須の金!? 栃木は地下資源の宝庫だった!
・F.L.ライトが山ごと買った大谷石の魅力
・葉脈から動物の体毛までくっきり! 古塩原湖に眠る太古の記憶
・栃木にゾウやサイがいた! 化石と野州石灰の産地・葛生
Part.2 栃木を走る充実の交通網
・県南を通る予定だった!? 東北本線の紆余曲折
・日本のマンチェスターを目指せ! 織物の街をつなぐ両毛線
・栃木随一の観光地をめぐるJR日光線と東武日光線の軌跡
・地域の産業を牽引した人車鉄道/郷愁誘う各地の廃線をたどる
・わたらせ渓谷鐵道の前身は足尾鉄道
・幾多の苦難を乗り越えた真岡線
・構想から25年を経て着工! 宇都宮~芳賀にLRTが走る
・要衝・下野国を貫く街道の変遷
・舟運で“蔵の街”となった栃木市
Part.3 栃木で動いた歴史の瞬間
・なぜ「那須」が付く市や町が多い?
・遺跡からたどる東山道と律令期の下野国
・平将門を討った豪傑・藤原秀郷とは何者か?
・足利氏には2つの流れがあった! 鎌倉幕府と下野御家人の関係
・名族宇都宮氏の栄枯盛衰
・ザビエルやフロイスも讃えた「坂東の大学」足利学校
・江戸幕府最大の聖地・日光東照宮創建
・廃藩置県、そして栃木県誕生!
・「一の宮」が2つ? 日光二荒山神社と宇都宮二荒山神社
・不毛の原野が酪農王国に! 那須野が原の大開拓
Part.4 栃木で生まれた産業や文化
・木綿、紬、絹織物、麻…栃木は織物の名産地
・益子焼が始まってまだ170年足らず? 益子が「陶器の里」になったわけ
・半世紀にわたって生産量日本一!! 栃木はなぜいちご王国になった?
・関東平野が工業誘致にぴったりだった? 宇都宮は新たなものづくり都市へ
・「それって栃木?」県名抜きで知名度の高い観光名所
『栃木のトリセツ』を購入するならこちら
※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!