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諏訪大社の御柱祭とは?
御柱祭(おんばしらまつり)(正式名は式年造営御柱大祭(しきねんぞうえいみはしらたいさい))とは、「御柱」と呼ばれる巨大な樅(もみ)の木を山から人の力だけで曳きおろし、この四つの神社それぞれの四隅に建てる祭です。世界に類を見ないスケールの巨木を用いる祭として、国外からも注目されています。
諏訪大社の御柱祭のルーツは縄文文化にあり?
御柱祭の縁起は解明しきれてはいませんが、巨木に神が宿ると信じる縄文文化をルーツとする説があります。室町時代の書物『諏訪大明神画詞(えことば)』には、桓武天皇治世(在位781~806年)の寅(とら)年に社の造営が行われたという記録が残されています。
諏訪大社の御柱祭:準備~本見立て・伐採~
御柱祭の開催は「申」と「寅」の年(数えで七年に一度開催)ですが、準備は着々と進められています。御柱祭前年(下社は前々年)の「本見立て」では、森の中からとりわけ立派な樅の木が上社と下社それぞれ8本、御柱として選ばれます。いずれも樹齢200年程度、周囲3mにもなる巨木ばかり。長さ16mにもなる御柱には「本宮一之御柱」「本宮二之御柱」と社ごとに名が振られます。そして「伐採」で御柱がいよいよ切り出されます。上社では神斧(かみよき)が御柱の根元に打ち込まれると、周りの氏子から歓声が上がります。御柱は、上社は「綱置場(つなおきば)」(茅野市玉川原山)、下社は「棚木場(たなこば)」(下諏訪町大平)に安置され、「山出し」のときを待ちます。
諏訪大社の御柱祭:前半~山出し~
御柱祭は大きくふたつに分かれます。前半(4月)の「山出し」では、御柱は氏子たちにより、諏訪大社に向かう山道を3日間かけて曳きすすめられます。そこに響くのは木遣(きやり)衆による高らかな木遣唄(きやりうた)です。「山の神さまに~お願いだ~」など、木遣唄のバリエーションはじつに豊富。唄が掛け声となり巨大な御柱は少しずつ曳かれていきます。
山出し最大の見どころは、御柱に男衆が乗ったまま山の急斜面を落ちる「木落し」です。下社の木落し坂の斜度はスキージャンプ台とほぼ同じ35度ほどで、重さ10トンの巨木が土埃を上げながら猛スピードで滑り落ちるさまは圧巻に尽きます。そして上社の御柱8本は安国寺の御柱屋敷に、下社の御柱8本は注し連め掛かけに曳きそろえられ、祭後半の「里曳き」のときを待ちます。
諏訪大社の御柱祭:後半~里曳き~
「里曳き」は山出しの1カ月後に行われます。上社は御柱屋敷から、下社は注連掛からそれぞれ氏子たちが3日間かけて曳いていきます。そして諏訪大社に着くと、いよいよクライマックスの「建御柱(たておんばしら)」を執り行います。御柱に結んだロープを四方から引っ張ることで、男衆を乗せたまま徐々に御柱が立ち上がっていきます。その様子はじつにスリリング。見事垂直に建ったときは大歓声が巻き起こります。
御柱祭の曳行路
諏訪湖を囲む6市町村が御柱祭の舞台。上社の「山出し」は「綱置場」から始まり3日かけて「御柱屋敷」へ。さらにひと月後の里曳きでは3日かけて諏訪大社上社へと向かいます。いっぽう、下社は「棚木場」から「注連掛」が山出しのルート。上社と同様にひと月後、3日間かけて里を曳いて諏訪大社下社へとたどり着きます。曳行路の全長は上社約13㎞ 、下社約8㎞ 。蛇行路、斜面、川などの悪路を人力のみで曳いていきます。
諏訪大社御柱祭
- 住所
- 長野県諏訪市下諏訪町、茅野市
- 交通
- JR中央本線上諏訪駅からかりんちゃんバス内回り線で40分、上社下車すぐ(諏訪大社上社本宮)
- 料金
- 木落し有料観覧席=5800円(上社)、3000~7000円(下社)/(要問合せ)
諏訪大社の御柱祭の後は「小宮の御柱祭」が諏訪各地の神社や祠で行われる
その後、晩夏から秋にかけて、諏訪地方のあちらこちらの神社や祠で、御柱祭のミニ版ともいうべき「小宮の御柱祭」が営まれます。これもまた御柱祭の年の大切な行事です。
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・伊那山地と南アルプスを縦貫!日本最大の断層・中央構造線
・大地溝帯フォッサマグナとかつて信州が海だった証
・火山活動の歴史を物語る山容 八ヶ岳連峰の南北で大きな違い
・北アルプス唯一の活火山!焼岳の噴火と上高地盆地の形成
・天竜川と断層で形成された伊那谷の日本一の河岸段丘
・野尻湖のナウマンゾウ化石に旧石器人の生活が見える?
・千曲川沿いの段丘上に築かれ、急崖と川が守る上田城のすごさ
などなど長野のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 長野を駆け抜ける鉄道網
・高崎~長野の長野新幹線に始まり敦賀への延伸を目指す北陸新幹線
・66.7パーミルの勾配路線だった信越本線碓氷峠とは?
・東京と名古屋を結ぶ大幹線で山岳地帯を駆け抜ける中央本線
・明治期に開通し善光寺平と松本盆地を結ぶ篠ノ井線
・伊那谷やアルプスを望み旧型国電も走った飯田線
・県内最大の路線網を誇った、私鉄・長野電鉄の変遷
・別所温泉に向かう温泉電車、上田電鉄別所線の魅力
などなど長野ならではの鉄道事情を網羅。
Part.3 長野で動いた歴史の瞬間
・縄文遺跡の宝庫・信州は日本一の人口密度だった!?
・信濃の国は有数の馬産地! 都に名を馳せた望月の駒とは?
・弓馬に長けた信濃武士が源氏配下として平氏討伐
・信州の南北戦争と呼ばれる大塔合戦はどうして起きた?
・甲斐武田信玄vs越後の上杉謙信、二大英雄が激戦を演じた川中島
・流転した善光寺の本尊は天下人の元に安置された?
・松本の貞亨騒動や上田の宝暦騒動 信州で百姓一揆が続発したわけ
・松本城が直面した取り壊し危機 救ったのは松本の住民だった!
などなど、激動の長野の歴史に興味を惹きつける。
Part.4 長野で育まれた産業や文化
・江戸時代に整備された用水路 五郎兵衛用水路とは?
・信州の気候風土を生かした寒冷地農業のここがすごい!
・蚕糸王国として栄えた長野県が電気機械工業県に変貌したわけ
・明治期の外国人別荘に始まる軽井沢エリアのリゾート化
・洪水を繰り返してきた暴れ川、千曲川を巡る治水事業の全容
・日本三大奇祭に数えられる、諏訪大社の御柱祭の本質とは!?
などなど長野の発展の歩みをたどる。
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