目次
松本城の歴史②:解体の危機が迫るも、松本市民のおかげで免れる
しかし、その前年1872(明治5)年に競売にかけられ、松本城天守は235両1分余で落札されていました。当時下横田町(松本市大手・城東・女鳥羽)の副戸長(こちょう)となっていた市川量造(いちかわりょうぞう)は、みずから創刊した「信飛(しんぴ)新聞」(長野県初の日刊新聞)の第1号で松本城落札を報じると、松本城は破却せずに「博覧館として活用すべきである」と建言書で述べました。市川は松本城を博覧会の会場として一般開放し、その収益で城を買い戻す計画を掲げました。この提案を筑摩県に提出し、10年間の破却延期の猶予と旧本丸の貸与を認めさせたのです。市川が奔走した甲斐もあって、1873(明治6)年11月に「松本博覧会」が開催されました。それまで庶民は立ち入ることが許されなかった天守に足を踏み入れられるとあって、博覧会は世間の耳目(じもく)をさらい、市川の計画通りに松本城は買い戻されたといいます。博覧会が開かれたことにより、天守は取り壊しを免れたのです。
松本城の歴史③:老朽化で再度解体の危機! ピンチを救ったのは…
1876(明治9)年8月21日には筑摩県は廃止され、旧筑摩県の信濃4郡は長野県に編入され、飛騨3郡は岐阜県に編入されました。この年まで合計5回開催されてきた松本博覧会は終了を迎え、次第に松本城の管理も行き届かなくなっていきます。明治30年代に入ると城郭施設の損傷が目立つようになり、天守も傾いてきていました。この危機を救ったのが、旧制松本中学の校長・小林有也(こばやしうなり)です。小林は松本市長の小里頼永(おりよりなが)らと「松本天守保存会」を立ち上げ、募金を集めて修理に着手します。松本城の補修工事は1903(明治36)年に開始し、1913(大正2)年まで続けられました。この工事の経費のうち、およそ8割が寄付金で賄われたというから、この天守がいかに市民から愛され、地元のシンボルとして親しまれていたかがうかがえます。
松本城の歴史④:国宝に指定される
松本城の天守、乾小天守(いぬいこてんしゅ)、渡櫓(わたりやぐら)、辰巳附(たつみつけ)櫓、月見櫓の5棟は、1936(昭和11)年に国宝に指定されました。太平洋戦争終結後、GHQの美術顧問からの薦めもあって文化財として補修工事が進められ、文化財保護法が制定されたあとの1952(昭和27)年に改めて国宝としての指定を受けました。松本城を保存するため多くの市民がはたらきかけ、募金や私費を投じました。まさしく「市民の城」であり、市の象徴といえるでしょう。
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Part.1 地図で読み解く長野の大地
・地形・地質総論「東西から圧縮されている長野」
・伊那山地と南アルプスを縦貫!日本最大の断層・中央構造線
・大地溝帯フォッサマグナとかつて信州が海だった証
・火山活動の歴史を物語る山容 八ヶ岳連峰の南北で大きな違い
・北アルプス唯一の活火山!焼岳の噴火と上高地盆地の形成
・天竜川と断層で形成された伊那谷の日本一の河岸段丘
・野尻湖のナウマンゾウ化石に旧石器人の生活が見える?
・千曲川沿いの段丘上に築かれ、急崖と川が守る上田城のすごさ
などなど長野のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 長野を駆け抜ける鉄道網
・高崎~長野の長野新幹線に始まり敦賀への延伸を目指す北陸新幹線
・66.7パーミルの勾配路線だった信越本線碓氷峠とは?
・東京と名古屋を結ぶ大幹線で山岳地帯を駆け抜ける中央本線
・明治期に開通し善光寺平と松本盆地を結ぶ篠ノ井線
・伊那谷やアルプスを望み旧型国電も走った飯田線
・県内最大の路線網を誇った、私鉄・長野電鉄の変遷
・別所温泉に向かう温泉電車、上田電鉄別所線の魅力
などなど長野ならではの鉄道事情を網羅。
Part.3 長野で動いた歴史の瞬間
・縄文遺跡の宝庫・信州は日本一の人口密度だった!?
・信濃の国は有数の馬産地! 都に名を馳せた望月の駒とは?
・弓馬に長けた信濃武士が源氏配下として平氏討伐
・信州の南北戦争と呼ばれる大塔合戦はどうして起きた?
・甲斐武田信玄vs越後の上杉謙信、二大英雄が激戦を演じた川中島
・流転した善光寺の本尊は天下人の元に安置された?
・松本の貞亨騒動や上田の宝暦騒動 信州で百姓一揆が続発したわけ
・松本城が直面した取り壊し危機 救ったのは松本の住民だった!
などなど、激動の長野の歴史に興味を惹きつける。
Part.4 長野で育まれた産業や文化
・江戸時代に整備された用水路 五郎兵衛用水路とは?
・信州の気候風土を生かした寒冷地農業のここがすごい!
・蚕糸王国として栄えた長野県が電気機械工業県に変貌したわけ
・明治期の外国人別荘に始まる軽井沢エリアのリゾート化
・洪水を繰り返してきた暴れ川、千曲川を巡る治水事業の全容
・日本三大奇祭に数えられる、諏訪大社の御柱祭の本質とは!?
などなど長野の発展の歩みをたどる。
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