目次
川中島の戦いとは？
両雄が直接対決した合戦は「川中島の戦い」の名で知られていますが、じつは川中島の戦いは1553（天文22）年から1564（永禄7）年までのあいだに合計5回行われています。このうち歴史に名高いのは1561（永禄4）年に行われた第四次合戦です。
「川中島」はどんなところ？
川中島とは、犀川（さいがわ）と千曲川が合流する扇状地（三角地帯）のことで、現在の長野市小島田（おしまだ）町のあたりを指します。武田信玄はこの付近に海津城（かいづじょう）（長野市松代町）を築いていました。第四次合戦の際、善光寺（長野市元善町）に着陣した上杉謙信は、犀川と千曲川を渡って妻女山（さいじょさん）（長野市松代町）に布陣し、海津城に相対していました。
川中島の戦いでなぜ両軍は激突することになったのか？
海津城の高坂昌信（こうさかまさのぶ）から報告を受けた武田信玄は、甲斐を発って茶臼山（ちゃうすやま）（長野市篠ノ井）に入り、八幡原（はちまんぱら）（長野市小島田町）を通過して海津城に入城します。両軍がにらみ合う膠着（こうちゃく）状態となり、その状況を打破するために、武田軍は「啄木鳥（きつつき）戦法」を決行しました。別働隊が妻女山の上杉軍を陽動（ようどう）して平野部（八幡原）までおびき出し、そこを本隊で叩くという作戦で、山本勘助（かんすけ）と馬場信春による立案とされています。ところが、上杉謙信は武田軍に別働隊があることを看破（かんぱ）し、夜陰に乗じて八幡原まで軍を移していたため、霧が晴れた早朝、両軍の本隊同士が平野部で鉢合わせしてしまったのです。両陣営ともに多大な被害を出しました、とくに武田側は武田信繁（のぶしげ）（信玄の弟）、山本勘助など多くの将兵が討死しました。
八幡原に整備された川中島古戦場史跡公園。八幡原は川中島の戦いで信玄が本陣を置いた場所で、激しい合戦の舞台となったといわれています。
川中島の戦いの伝承：武田信玄と上杉謙信が一騎討ち？
この合戦では、武田信玄と上杉謙信が一騎討ちに及んだとの伝承があります。上杉謙信が騎馬で武田本陣に乗り込み、床几（しょうぎ）に腰掛けた武田信玄へと太刀で斬りつけると、信玄はそれを軍配で受け止めたという描写が『甲越信戦録（こうえつしんせんろく）』にありますが、これは後世（19世紀以降）に成立した軍記物なので、実際に一騎討ちがあったかどうかは真偽不明です。なお、長野市小島田町にある川中島古戦場史跡公園には、この逸話にちなみ、武田信玄と上杉謙信の一騎討ち像が建立されています。
川中島の戦いのその後 ～「敵に塩を送る」の語源で知られる逸話～
川中島の戦い以降、武田信玄は外征方針を転換し、今川義元（よしもと）亡きあとの駿河今川氏と争うようになっていきます。今川氏から塩止め（武田氏への塩の供給を停止）を受けた際には、謙信が信玄に塩を送り窮地を救ったといいます。「敵に塩を送る」の語源となった逸話で、信玄が謙信に感謝の印として贈った太刀「弘（以下一字不明）」（塩留めの太刀）は重要文化財に指定され、現在は東京国立博物館（東京都台東区）に収蔵されています。
川中島の戦いが江戸時代ブームに
江戸時代、旅行は制限されていましたが、神社仏閣巡りは許可されていたため、参詣を目的とした行楽・旅行が盛んになりました。長野県域では善光寺が参詣先として人気で、歌川芳虎の浮世絵に「牛に引かれて善光寺参り」との文章が添えられたほどでした。善光寺参りの土産として武者絵の錦絵（浮世絵）が珍重され、その題材として取り上げられた川中島の戦いは江戸庶民のあいだでブームとなったのです。
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Part.1 地図で読み解く長野の大地
・地形・地質総論「東西から圧縮されている長野」
・伊那山地と南アルプスを縦貫！日本最大の断層・中央構造線
・大地溝帯フォッサマグナとかつて信州が海だった証
・火山活動の歴史を物語る山容 八ヶ岳連峰の南北で大きな違い
・北アルプス唯一の活火山！焼岳の噴火と上高地盆地の形成
・天竜川と断層で形成された伊那谷の日本一の河岸段丘
・野尻湖のナウマンゾウ化石に旧石器人の生活が見える？
・千曲川沿いの段丘上に築かれ、急崖と川が守る上田城のすごさ
などなど長野のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 長野を駆け抜ける鉄道網
・高崎～長野の長野新幹線に始まり敦賀への延伸を目指す北陸新幹線
・66.7パーミルの勾配路線だった信越本線碓氷峠とは？
・東京と名古屋を結ぶ大幹線で山岳地帯を駆け抜ける中央本線
・明治期に開通し善光寺平と松本盆地を結ぶ篠ノ井線
・伊那谷やアルプスを望み旧型国電も走った飯田線
・県内最大の路線網を誇った、私鉄・長野電鉄の変遷
・別所温泉に向かう温泉電車、上田電鉄別所線の魅力
などなど長野ならではの鉄道事情を網羅。
Part.3 長野で動いた歴史の瞬間
・縄文遺跡の宝庫・信州は日本一の人口密度だった!?
・信濃の国は有数の馬産地！ 都に名を馳せた望月の駒とは？
・弓馬に長けた信濃武士が源氏配下として平氏討伐
・信州の南北戦争と呼ばれる大塔合戦はどうして起きた？
・甲斐武田信玄vs越後の上杉謙信、二大英雄が激戦を演じた川中島
・流転した善光寺の本尊は天下人の元に安置された？
・松本の貞亨騒動や上田の宝暦騒動 信州で百姓一揆が続発したわけ
・松本城が直面した取り壊し危機 救ったのは松本の住民だった！
などなど、激動の長野の歴史に興味を惹きつける。
Part.4 長野で育まれた産業や文化
・江戸時代に整備された用水路 五郎兵衛用水路とは？
・信州の気候風土を生かした寒冷地農業のここがすごい！
・蚕糸王国として栄えた長野県が電気機械工業県に変貌したわけ
・明治期の外国人別荘に始まる軽井沢エリアのリゾート化
・洪水を繰り返してきた暴れ川、千曲川を巡る治水事業の全容
・日本三大奇祭に数えられる、諏訪大社の御柱祭の本質とは!?
などなど長野の発展の歩みをたどる。
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