上田電鉄別所線の始まりは、1921（大正10）年に三好町（みよしちょう）（現・城下（しろした））～青木間の青木線、上田原～別所（現・別所温泉）間の川西線を開業させた上田温泉電軌によります。三好町駅は当時のターミナル駅で千曲川の南岸にあったのですが、1924（大正13）年に鉄橋が架橋され上田駅に乗り入れとなりました。

上田温泉電軌は1939（昭和14）年に上田電鉄に改称し、同年に川西線は別所線に改められました。1943（昭和18）年には丸子鉄道と合併し上田丸子電鉄となり、別所線のほか丸子線、西丸子線、真田傍陽線（さなだそえひせん）と約50㎞のネットワークを構築しました。しかし、これらの路線はモータリゼーションの波に押されるなどして相次いで廃止。そのなか別所線は廃止を免れ路線維持されました。さらに、上田丸子電鉄は1969（昭和44）年に上田交通に改称、2005（平成17）年に現在の上田電鉄に改められました。

現在の車両は東急電鉄から譲渡された1000系と中間車から改造された6000系で、編成ごとにラッピングが施され楽しいですが、1986（昭和61）年10月に架線電圧が750ボルトから1500ボルトに昇圧される以前は、さまざまな車両が走っていました。

そのなかで、著名だったのが車体の戸袋窓が楕円形をした5250形です。驚くなかれ、同車は上田温泉電軌が1928（昭和３）年に新造した開業当時の車両（旧デナ200形）だったのです。そのモダンなスタイルから「丸窓電車」と呼ばれ、開業当時から変わらぬ風情で走り続けました。楕円形の窓もさることながら、木製ニス塗りの車内、側面の木造ドア、屋根のお椀型ベンチレーター、台枠の歪みを防ぐための床下のトラス棒など、昭和初期の電車そのままの姿が魅力的で長く親しまれてきました。

「丸窓電車」は、電圧が昇圧する前日まで運転され、多くの地元住民が名残惜しむように乗車し、最終列車は満員の盛況でした。引退後は１両が別所温泉駅の構内で保存され、現在も温泉客など多くの利用者の目に触れ人気を集めています。

なお、上田電鉄別所線は「令和元年東日本台風」により千曲川橋梁が崩落。一時は全線不通となっていましたが懸命な努力で徐々に運転を再開。2020（令和２）年11月末現在、上田～城下間が不通となっていますが、2021（令和３）年３月28日の全線運行再開を目指し復旧工事を進めています。
※2021年3月に復旧し、全線で運転を再開しました。

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