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篠ノ井線の山岳路線らしい設備①:長大なトンネル

冠着(かむりき)駅をサミット(峠越えの頂上)に最急25パーミルの急勾配が連続しており、長いトンネルが多くあります。なかでも冠着~姨捨(おばすて)間では、開通時は日本一の長さを誇った全長2656mの冠着トンネルが現役です。

篠ノ井線を走るSLの煙問題

一直線のトンネルですが、SL時代は煙に悩まされました。上り勾配を進む列車は煙を吐き続けますが、煙は進行方向の出口に向けて流れるためトンネル内は煙突化し列車には煙がまとわっていました。これにより乗務員らが窒息する事故が多発してしまいます。そのため「引幕(ひきまく)」を行いました。

SLの煙問題対策で行われた「引幕」

引幕とは、列車がトンネルに入った直後に排煙幕を下ろし、入り口をふさぐことにより機関車の後方の気圧を下げ、入り口側に煙を流して煙害を改善させるものです。トンネルに配置された専属の職員による作業で、当時の鉄道運行の労苦が偲ばれます。
引幕は1931(昭和6)年には送風機による排煙に代わりました。これは、直径8mの風車を回し秒速30mの風を送って威力を発揮しますが、煤煙との闘いはSLが廃止される1970(昭和45)年まで続きました。現在でもトンネルの抗口には排煙幕のウインチ跡や送風設備の遺構が残り、とくに姨捨側の抗口は古いレンガや石積みで意匠も美しいです。

篠ノ井線の山岳路線らしい設備②:2カ所のスイッチバック

トンネルとともに山岳路線らしい設備が2カ所のスイッチバックです。篠ノ井線のスイッチバックは、連続する勾配途中に水平な停車場を設けるため分岐線を列車が折り返す、通過型スイッチバックと呼ばれるものです。姨捨駅と姨捨~稲荷山間にある桑ノ原信号場の2カ所ですが、過去には廃止された潮沢(うしおざわ)信号場、羽尾(はねお)信号場も同様の構造でした。なかでも姨捨駅は、スイッチバックをする駅ホームから姨捨(おばすて)の棚田が見渡せ、空気が澄んでいれば北信五岳(ほくしんごがく)(飯縄山(いいづなやま)・戸隠山(とがくしやま)・黒姫山(くろひめやま)・妙高山(みょうこうさん)・斑尾山(まだらおやま))も望める絶好の展望台となっています。

篠ノ井線の路線図

塩尻駅は松本盆地南端、篠ノ井駅は長野盆地南部に位置し、篠ノ井線は山岳地帯を克服して、そのふたつの盆地を全15駅で結んでいます。スイッチバック構造で知られる姨捨駅には2面2線の相対式ホームがあり、その眼下に広がる眺望は、根室本線落合~新得間、肥薩線矢岳~真幸間とともに「日本三大車窓」に数えられています。

篠ノ井線で活躍する列車

篠ノ井線の列車は、特急「しなの」や普通列車のほか、貨物列車が多数運転されています。多くは石油輸送列車で、これは冬期の暖房需要など長野県内への石油供給を目的としたものです。南松本駅は、石油を扱う本格的な貨物駅でもあります。

篠ノ井線の急勾配に対応するため、機関車はEF64形の重連、またはハイパワーなEH200形を使用。EF200形は「ECO POWER ブルーサンダー」の愛称をもつJR貨物の機関車で、2001(平成13)年に試作され、のちに量産化されました。これは国鉄時代に登場したEF64形の後継機であり、同機の重連に匹敵する性能を誇ります。篠ノ井線ではその性能を遺憾なく発揮しています。

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Part.1 地図で読み解く長野の大地

・地形・地質総論「東西から圧縮されている長野」
・伊那山地と南アルプスを縦貫!日本最大の断層・中央構造線
・大地溝帯フォッサマグナとかつて信州が海だった証
・火山活動の歴史を物語る山容 八ヶ岳連峰の南北で大きな違い
・北アルプス唯一の活火山!焼岳の噴火と上高地盆地の形成
・天竜川と断層で形成された伊那谷の日本一の河岸段丘
・野尻湖のナウマンゾウ化石に旧石器人の生活が見える?
・千曲川沿いの段丘上に築かれ、急崖と川が守る上田城のすごさ

などなど長野のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 長野を駆け抜ける鉄道網

・高崎~長野の長野新幹線に始まり敦賀への延伸を目指す北陸新幹線
・66.7パーミルの勾配路線だった信越本線碓氷峠とは?
・東京と名古屋を結ぶ大幹線で山岳地帯を駆け抜ける中央本線
・明治期に開通し善光寺平と松本盆地を結ぶ篠ノ井線
・伊那谷やアルプスを望み旧型国電も走った飯田線
・県内最大の路線網を誇った、私鉄・長野電鉄の変遷
・別所温泉に向かう温泉電車、上田電鉄別所線の魅力

などなど長野ならではの鉄道事情を網羅。

Part.3 長野で動いた歴史の瞬間

・縄文遺跡の宝庫・信州は日本一の人口密度だった!?
・信濃の国は有数の馬産地! 都に名を馳せた望月の駒とは?
・弓馬に長けた信濃武士が源氏配下として平氏討伐
・信州の南北戦争と呼ばれる大塔合戦はどうして起きた?
・甲斐武田信玄vs越後の上杉謙信、二大英雄が激戦を演じた川中島
・流転した善光寺の本尊は天下人の元に安置された?
・松本の貞亨騒動や上田の宝暦騒動 信州で百姓一揆が続発したわけ
・松本城が直面した取り壊し危機 救ったのは松本の住民だった!

などなど、激動の長野の歴史に興味を惹きつける。

Part.4 長野で育まれた産業や文化

・江戸時代に整備された用水路 五郎兵衛用水路とは?
・信州の気候風土を生かした寒冷地農業のここがすごい!
・蚕糸王国として栄えた長野県が電気機械工業県に変貌したわけ
・明治期の外国人別荘に始まる軽井沢エリアのリゾート化
・洪水を繰り返してきた暴れ川、千曲川を巡る治水事業の全容
・日本三大奇祭に数えられる、諏訪大社の御柱祭の本質とは!?

などなど長野の発展の歩みをたどる。

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