野尻湖でナウマンゾウの化石や旧石器人の道具が多数出土
野尻湖誕生(約7万年前)から現在まで湖底に堆積した、厚さ数mに及ぶ地層は野尻湖層と呼ばれています。この野尻湖層のうち約6万~3万8000年前の地層から、ナウマンゾウやヤベオオツノジカといった大型哺乳動物の化石、日本最古の骨器(こっき)、剥片石器(はくへんせっき)などが出土。約4万3000年前の地層からは、骨器や剥片石器のほか、槍状木器(やりじょうもっき)、大型獣を解体したと考えられている場所(キルサイト)なども見つかりました。約3万8000年前以降の地層からは大型獣の化石は見つかっていません。ナウマンゾウ発掘地から近い野尻湖畔の杉久保(すぎくぼ)遺跡(上水内郡信濃町)で、杉久保型ナイフ形石器などが発掘されています。
野尻湖に生息していたナウマンゾウはどんな姿だったのか?
これまでの発掘調査により、野尻湖に生息していたナウマンゾウは肩までの高さが2.2m~2.7mほどで、日本で見つかっているほかのナウマンゾウ(肩までの高さが約2m前後)より少し大きいことがわかっています。1990(平成2)年の第11次発掘調査では、世界初のナウマンゾウの足跡の化石が見つかっています。ちなみにナウマンゾウの名前は、日本でゾウの化石を初めて研究したドイツの地質学者、エドムント・ナウマン博士の名前から名付けられています。
野尻湖の出土品からわかる旧石器人の暮らし
ナウマンゾウなどの大型獣の化石は臼歯(きゅうし)や牙、大腿骨、肋骨などバラバラの状態で見つかっています。同じ地層からナウマンゾウの骨を加工した骨製(こつせい)クリーヴァー(ナタ状骨器)や骨製スクレイパー(皮はぎに使われたと考えられる骨器)、ナイフ形石器、スクレイパーなどの石器が出土していることから、野尻湖は有数のキルサイトであったと考えられています。野尻湖層からは植物や花粉、昆虫の化石など、当時の環境を示す化石もたくさん見つかっており、氷河時代の環境変化が詳しく調べられています。寒冷地の植物の木の実や花粉が発見されていることから、旧石器時代に野尻湖周辺で暮らしていた人々(野尻湖人)は寒い環境で生活していたと推察できます。
ナウマンゾウはかつて長野県域に多数生息していた!
1970(昭和45)年には長野市の裾花川(すそばながわ)沿いの崖でも、ナウマンゾウと思われる化石が見つかっています。化石が発見されたのは10万年前~数万年前の南郷層と呼ばれる地層です。長野県内では、野尻湖周辺、長野市のほか、中野市、上田市、上田盆地周辺、八ヶ岳山麓、千曲川流域など約10カ所でナウマンゾウの化石が出土。数10万~約3万年前の長野県域には、ナウマンゾウが多数生息していたことがうかがえます。
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Part.1 地図で読み解く長野の大地
・地形・地質総論「東西から圧縮されている長野」
・伊那山地と南アルプスを縦貫!日本最大の断層・中央構造線
・大地溝帯フォッサマグナとかつて信州が海だった証
・火山活動の歴史を物語る山容 八ヶ岳連峰の南北で大きな違い
・北アルプス唯一の活火山!焼岳の噴火と上高地盆地の形成
・天竜川と断層で形成された伊那谷の日本一の河岸段丘
・野尻湖のナウマンゾウ化石に旧石器人の生活が見える?
・千曲川沿いの段丘上に築かれ、急崖と川が守る上田城のすごさ
などなど長野のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 長野を駆け抜ける鉄道網
・高崎~長野の長野新幹線に始まり敦賀への延伸を目指す北陸新幹線
・66.7パーミルの勾配路線だった信越本線碓氷峠とは?
・東京と名古屋を結ぶ大幹線で山岳地帯を駆け抜ける中央本線
・明治期に開通し善光寺平と松本盆地を結ぶ篠ノ井線
・伊那谷やアルプスを望み旧型国電も走った飯田線
・県内最大の路線網を誇った、私鉄・長野電鉄の変遷
・別所温泉に向かう温泉電車、上田電鉄別所線の魅力
などなど長野ならではの鉄道事情を網羅。
Part.3 長野で動いた歴史の瞬間
・縄文遺跡の宝庫・信州は日本一の人口密度だった!?
・信濃の国は有数の馬産地! 都に名を馳せた望月の駒とは?
・弓馬に長けた信濃武士が源氏配下として平氏討伐
・信州の南北戦争と呼ばれる大塔合戦はどうして起きた?
・甲斐武田信玄vs越後の上杉謙信、二大英雄が激戦を演じた川中島
・流転した善光寺の本尊は天下人の元に安置された?
・松本の貞亨騒動や上田の宝暦騒動 信州で百姓一揆が続発したわけ
・松本城が直面した取り壊し危機 救ったのは松本の住民だった!
などなど、激動の長野の歴史に興味を惹きつける。
Part.4 長野で育まれた産業や文化
・江戸時代に整備された用水路 五郎兵衛用水路とは?
・信州の気候風土を生かした寒冷地農業のここがすごい!
・蚕糸王国として栄えた長野県が電気機械工業県に変貌したわけ
・明治期の外国人別荘に始まる軽井沢エリアのリゾート化
・洪水を繰り返してきた暴れ川、千曲川を巡る治水事業の全容
・日本三大奇祭に数えられる、諏訪大社の御柱祭の本質とは!?
などなど長野の発展の歩みをたどる。
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