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奥裾花渓谷が物語る信州が海だったという証
奥裾花渓谷で見られるのは、砂岩や泥岩、礫岩(れきがん)など、海底の堆積物からなる岩石です。ホタテガイの仲間など海の生物の化石も採取されており、かつて、この山深い信州が海だったことを物語っています。
奥裾花渓谷の海の証:地層
約2000万年前、日本の中央部を南北に走る大断層「糸魚川-静岡構造線」の動きによって、長野県の東北部一帯は海となっていました。海となった地域は「フォッサマグナ」と呼ばれ、さらに堆積が続きました。こうして約300万~200万年前に堆積したのが奥裾花渓谷で見られる地層です。
ここでは、シャコや貝などの巣穴の化石(サンドパイプ)を観察できます。地層に含まれる砂や礫の粒径が上位に向かうほど大きくなることから、時代が進むにつれて水深が浅くなっていったことが想像できます。鬼無里の西方にある北アルプス(飛騨山脈)の隆起が激しくなったためだとされます。また、北アルプス方面で激しい噴火が起こり、火山灰が堆積してできた白い凝灰岩(ぎょうかいがん)層も、千畳敷岩の近くで見ることができます。
奥裾花渓谷の海の証:奇岩
その後、日本列島付近ではプレートの動きが激しくなり、戸隠・鬼無里一帯が隆起して現在の山地ができました。奥裾花で見られる向斜(こうしゃ)構造(日影(ひかげ)向斜)は、その地殻変動の痕跡です。隆起した大地が水によって侵食され、深い奥裾花渓谷を形成していきました。その際、地層の硬さの違いによって侵食量の差が生じたため、千畳敷岩やケスタ地形などの奇岩が生まれました。
奥裾花渓谷のおもな見どころ
長野駅から車で90分ほど。奥裾花ダムより上流部の林道大川線沿いに、地層・地形観察に適した岩壁が多くあります。裾花川は長野駅付近で犀川に合流し、千曲川へ注いでいます。
【奥裾花渓谷の見どころ】ポットホール(甌穴)
岩に開いた壷状の穴。川底の窪みにはまった岩石が、川の流れで回転し、川底を侵食してできます。
【奥裾花渓谷の見どころ】サンドパイプ
シャコやカニ、貝などの巣穴に、砂や泥が詰まってできた生痕化石。砂岩層のなかに、管状に現れます。
【奥裾花渓谷の見どころ】千畳敷岩
クルワドウ沢近くにある塊状の砂岩。幅約80m、高さ約15m の巨大な一枚岩。地層がはがれ、層理面(地層と地層の境目)が露出したものです。
【奥裾花渓谷の見どころ】日影向斜
「向斜」とは、横からの圧力によって曲がりくねった地層の谷部分のことです。猿丸層中の「日影層」を中心に形成された向斜構造なので「日影向斜」といわれます。
【奥裾花渓谷の見どころ】リップルマーク(漣痕)
海底の砂の上にできた波のあとが固まったものです。当時の水流の向きを知ることができます。
【奥裾花渓谷の見どころ】ケスタ地形
やわらかい層と硬い層が交互に堆積した地層が隆起し、やわらかい層だけが雨水に削り取られてできた階段状の地形。
奥裾花渓谷の不思議な地形が生み出した数々の伝説
こうした壮大で不思議な地形を見た人々は、山や川がどうしてできるのかを考えたに違いありません。古代、鬼無里に遷都をする計画があったといいます。その遷都を阻止するため、この地に住む鬼たちが一夜で築いた山が「一夜山(いちやさん)」だという伝説があります。それに怒った天武天皇が鬼たちを退治したので、「鬼のいない里=鬼無里」になったといわれています(諸説あり)。また、それ以前、この地は「水無瀬(みなせ)」と呼ばれており、その由来は「水が引いて現れた土地だから」と伝わっています。この土地の地質と、人々の営みが交わって、こんな伝説が生み出されてきたのでしょう。
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Part.1 地図で読み解く長野の大地
・地形・地質総論「東西から圧縮されている長野」
・伊那山地と南アルプスを縦貫!日本最大の断層・中央構造線
・大地溝帯フォッサマグナとかつて信州が海だった証
・火山活動の歴史を物語る山容 八ヶ岳連峰の南北で大きな違い
・北アルプス唯一の活火山!焼岳の噴火と上高地盆地の形成
・天竜川と断層で形成された伊那谷の日本一の河岸段丘
・野尻湖のナウマンゾウ化石に旧石器人の生活が見える?
・千曲川沿いの段丘上に築かれ、急崖と川が守る上田城のすごさ
などなど長野のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 長野を駆け抜ける鉄道網
・高崎~長野の長野新幹線に始まり敦賀への延伸を目指す北陸新幹線
・66.7パーミルの勾配路線だった信越本線碓氷峠とは?
・東京と名古屋を結ぶ大幹線で山岳地帯を駆け抜ける中央本線
・明治期に開通し善光寺平と松本盆地を結ぶ篠ノ井線
・伊那谷やアルプスを望み旧型国電も走った飯田線
・県内最大の路線網を誇った、私鉄・長野電鉄の変遷
・別所温泉に向かう温泉電車、上田電鉄別所線の魅力
などなど長野ならではの鉄道事情を網羅。
Part.3 長野で動いた歴史の瞬間
・縄文遺跡の宝庫・信州は日本一の人口密度だった!?
・信濃の国は有数の馬産地! 都に名を馳せた望月の駒とは?
・弓馬に長けた信濃武士が源氏配下として平氏討伐
・信州の南北戦争と呼ばれる大塔合戦はどうして起きた?
・甲斐武田信玄vs越後の上杉謙信、二大英雄が激戦を演じた川中島
・流転した善光寺の本尊は天下人の元に安置された?
・松本の貞亨騒動や上田の宝暦騒動 信州で百姓一揆が続発したわけ
・松本城が直面した取り壊し危機 救ったのは松本の住民だった!
などなど、激動の長野の歴史に興味を惹きつける。
Part.4 長野で育まれた産業や文化
・江戸時代に整備された用水路 五郎兵衛用水路とは?
・信州の気候風土を生かした寒冷地農業のここがすごい!
・蚕糸王国として栄えた長野県が電気機械工業県に変貌したわけ
・明治期の外国人別荘に始まる軽井沢エリアのリゾート化
・洪水を繰り返してきた暴れ川、千曲川を巡る治水事業の全容
・日本三大奇祭に数えられる、諏訪大社の御柱祭の本質とは!?
などなど長野の発展の歩みをたどる。
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