フォッサマグナの形成の過程
約2000万~1500万年前、日本列島のもととなる島々が大陸から分離し、そのあいだに日本海が形成されていきました。これらの島々のうち西半分(西南日本側)は時計回りに、東半分(東北日本側)は反時計回りに回転するように動き、中央付近が引き裂かれるようにして非常に深い溝ができました。この溝は太平洋と日本海をつなぐ海(フォッサマグナの海)となり、深さは数百~数千mにも達しています。長野では長野市や上田市全域が含まれ、松本市が西のキワに当たります。
フォッサマグナの海には、長い年月をかけて、土砂や海底火山の噴出物が堆積して地層をつくっていきました。深い海が、徐々に埋め立てられて陸になったのです。実際、フォッサマグナの両側の岩石が約4~1億年前のものであるのに対し、フォッサマグナ内部の岩石が約2000万年前以降の比較的新しいものであることも、こうした歴史を確かに物語っています。
フォッサマグナのイメージ
ナウマン博士が予想したフォッサマグナの東縁(直江津-平塚線)は発見されず、現在ではフォッサマグナの範囲を「新発田-小出構造線」と「柏崎-千葉構造線」を東縁に、「糸魚川-静岡構造線」を西縁とするのが一般的です。深さは、ボーリング調査の結果から6000m超あることがわかっています。
フォッサマグナ地域から多数発見される海の痕跡
また、一帯がかつて深い海の底だった痕跡として、フォッサマグナ地域からは海洋生物の化石が豊富に発見されています。
【フォッサマグナの海の痕跡①】志賀地区で発見された海洋哺乳類化石
松本市北部の四賀(しが)地区(当時は四賀村)の約1500万~1300万年という海底堆積物が少ない時代の地層(別所層)からは、シガマッコウクジラ(世界最古のマッコウクジラ)の化石が発掘されました。四賀地区は、長野県内屈指の海洋哺乳類化石の産出地で、ほかにシナノイルカ(世界最古のマイルカ類)やアシカやトドの仲間(鰭脚類(ききゃくるい))であるシナノアロデスムスの頭骨なども発見されています。これらは、松本市四賀地区にある松本市四賀化石館で見学可能です。
【フォッサマグナの海の痕跡②】戸隠連峰で発見された貝化石
長野市北西部にある戸隠連峰は、戸隠山(標高1908m)などの山々が連なる背が高い険しい山岳地形です。この戸隠連峰ではシナノホタテ(ホタテガイの仲間で絶滅種)などの貝化石が多数産出されることで知られています。かつて戸隠地域では、この貝化石を鶏のエサに使ったとされています。
戸隠連峰から貝化石が産出されるのも、かつてここがフォッサマグナ海の底であったからにほかなりません。このあたりは新第三紀鮮新世(約500万~400万年前)の海底火山の噴出物などが堆積してできた、フォッサマグナとしては新しい地層からなります。この地層が、激しい地殻変動によって大きく盛り上がり山々を形成したのです。
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Part.1 地図で読み解く長野の大地
・地形・地質総論「東西から圧縮されている長野」
・伊那山地と南アルプスを縦貫!日本最大の断層・中央構造線
・大地溝帯フォッサマグナとかつて信州が海だった証
・火山活動の歴史を物語る山容 八ヶ岳連峰の南北で大きな違い
・北アルプス唯一の活火山!焼岳の噴火と上高地盆地の形成
・天竜川と断層で形成された伊那谷の日本一の河岸段丘
・野尻湖のナウマンゾウ化石に旧石器人の生活が見える?
・千曲川沿いの段丘上に築かれ、急崖と川が守る上田城のすごさ
などなど長野のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 長野を駆け抜ける鉄道網
・高崎~長野の長野新幹線に始まり敦賀への延伸を目指す北陸新幹線
・66.7パーミルの勾配路線だった信越本線碓氷峠とは?
・東京と名古屋を結ぶ大幹線で山岳地帯を駆け抜ける中央本線
・明治期に開通し善光寺平と松本盆地を結ぶ篠ノ井線
・伊那谷やアルプスを望み旧型国電も走った飯田線
・県内最大の路線網を誇った、私鉄・長野電鉄の変遷
・別所温泉に向かう温泉電車、上田電鉄別所線の魅力
などなど長野ならではの鉄道事情を網羅。
Part.3 長野で動いた歴史の瞬間
・縄文遺跡の宝庫・信州は日本一の人口密度だった!?
・信濃の国は有数の馬産地! 都に名を馳せた望月の駒とは?
・弓馬に長けた信濃武士が源氏配下として平氏討伐
・信州の南北戦争と呼ばれる大塔合戦はどうして起きた?
・甲斐武田信玄vs越後の上杉謙信、二大英雄が激戦を演じた川中島
・流転した善光寺の本尊は天下人の元に安置された?
・松本の貞亨騒動や上田の宝暦騒動 信州で百姓一揆が続発したわけ
・松本城が直面した取り壊し危機 救ったのは松本の住民だった!
などなど、激動の長野の歴史に興味を惹きつける。
Part.4 長野で育まれた産業や文化
・江戸時代に整備された用水路 五郎兵衛用水路とは?
・信州の気候風土を生かした寒冷地農業のここがすごい!
・蚕糸王国として栄えた長野県が電気機械工業県に変貌したわけ
・明治期の外国人別荘に始まる軽井沢エリアのリゾート化
・洪水を繰り返してきた暴れ川、千曲川を巡る治水事業の全容
・日本三大奇祭に数えられる、諏訪大社の御柱祭の本質とは!?
などなど長野の発展の歩みをたどる。
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