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厳島の歴史は平清盛が大きくかかわる

瀬戸内海に浮かぶ「神の島」は、時の権力者にも注目されました。中でも特に嚴島神社を崇敬したのが、平氏棟梁・平清盛です。

清盛は海上交通の発達と、それによる経済発展に着目した人物。当時の日宋貿易の日本側交易拠点は、福岡県の太宰府や博多でした。そこで、神戸の大輪田泊(おおわだのとまり)と宋を結ぶ貿易航路を確立させ、日宋貿易による富を平氏にもたらし、財政基盤を盤石のものとしました。

さらに瀬戸内海交通の要所として栄えていた厳島を平氏の守護神・海上交通の守り神として着目。この地に航海安全を祈願すれば、瀬戸内海を制覇することができると考えたのかもしれません。

清盛は1168(仁安3)年、嚴島神社の社殿を造営します。社殿が沈むことなく海中に立ち続けられるのは、潮位を計算して社殿を建立したからともいわれています。

日宋貿易の航路

日宋貿易の航路

大輪田泊を出港し、瀬戸内海を抜けて済州島を経由して宋へ向かうルートの予測。平清盛は瀬戸内海航路の安全を祈願して 嚴島神社を建立したといわれます。

嚴島神社を信仰していた毛利元就と治水対策

毛利元就も、嚴島神社を信仰した一人です。陶晴賢(すえはるかた)を破った嚴島合戦の後、5代目の大鳥居を再建し、能舞台(現舞台は浅野氏が建立)を作っています

孫の毛利輝元は土砂災害が発生しやすかった宮島の治水対策にも熱心だったと思われます。御手洗(みたらい)川と白糸(しらいと)川を合流させて流れを変え、嚴島神社に水が流れ込まないようにしています。さらに土留めの石垣なども整備され、現在でもその跡を見ることができます。

嚴島神社のシンボル大鳥居の構造がすごい

嚴島神社のシンボルともいわれる朱の大鳥居は、海底を掘って埋められているのではなく、自分の重みだけで立っています。ただし、鳥居本体の重さは60tですが、それに加えて笠木(かさぎ)と島木(しまぎ)の中に重しとして小石が詰められています。

さらに、波が穏やかな瀬戸内海とはいえ、脚元の砂が波でさらわれる可能性があるため、地盤強化のため海底に松材を千本杭として埋設。その上に板石を置いて鳥居の荷重分散を図り、大鳥居が置かれているのです。

現在の大鳥居は、1875(明治8)年に立てられたもので8代目に当たります。2本の主柱には、香川県丸亀市と宮崎県西都市から取り寄せた樹齢600~700年程度の楠木が使用されています。

この大鳥居は2019(令和元)年6月から、修復作業中。屋根葺替・塗装塗替・木部調査補修が行われています。柱内部の腐食が進行しているため、この部分をどう修復するかが大きな課題で、修復完了見込みは未定となっています。

嚴島神社のシンボル大鳥居の構造がすごい

嚴島神社

住所
広島県廿日市市宮島町1-1
交通
宮島桟橋から徒歩15分
料金
神社=大人300円、高校生200円、小・中学生100円/神社・宝物館共通=大人500円、高校生300円、小・中学生150円/(障がい者手帳持参で大人100円、小・中・高校生無料)

厳島の歴史と鹿

厳島には、野生の鹿が暮らしています。平安時代にはすでに鹿がいたといわれており、江戸時代の絵図にも鹿が描かれています。

奈良の鹿とはDNAが異なることから、厳島がかつて対岸と陸続きだった時代からこの地に住んでおり、縄文海進の海面上昇により離島となった際に取り残された鹿の子孫ではないかと考えられています。

現在約500頭が生息しており、市街地に下りて来るのは約100頭。観光マップなどを食べられないよう、注意が必要です。

>>厳島(宮島)で観光するならこちらの記事へ

厳島の歴史と鹿

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冷泉数はトップクラス!?知られざる広島と温泉の関係
宮島の紅葉谷は人工的に造られたものだった!
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<コラム>
データで分かる全23市町 人口、観光、農業・漁業
絵図と写真で見る広島の鉄道
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絵図で見る安芸の宮島 ほか

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