日清戦争終結により宇品線は、軍事輸送専用線としての役割を一旦終了することとなります。終戦2年後の1897（明治30）年5月には、山陽鉄道が陸軍省から路線を借り受ける形で運輸営業を開始。1906（明治39）年に鉄道国有法で山陽鉄道が国有化されたため「国鉄宇品線」として生まれ変わり、市民の足として大いに活躍しました。

しかしそこは、元・軍事輸送専用線の悲しさ。第一次世界大戦勃発後の1915（大正4）年4月には再び軍の専用線となり、一般営業が廃止されました。

宇品線は全線単線の非電化路線だったため、戦時下の輸送には十分対応できませんでした。そのため軍は第二次世界大戦中、一般客の利用を制限。さらに輸送力不足を補完するため、広島電鉄に広島駅～宇品港を直線的に結ぶ「比治山線（ひじやません）」の建設を要請しています。こういった事情もあり、宇品線は市民にとって安定した公共交通機関とは認識されていませんでした。

1945（昭和20）年8月6日の原爆投下では比較的被害が少なかったため、当日に運転を再開。南段原（みなみだんばら）駅～宇品駅を3往復し、約3000人の負傷者を宇品凱旋（がいせん）館に収容しました。

終戦により軍事輸送専用線としての役目を終えた宇品線は、市民の足として再び活躍することとなります。

戦後、原爆での被害が比較的少なかった宇品線沿線には官公庁や学校などが次々と造られ、通勤・通学の利用ニーズが高まりました。広島駅では1番線ホームの東側の先、0番ホームから宇品線が発着。1953（昭和28）年には、広島駅～宇品駅を平日23往復していたといいます。

これを受けて1954（昭和29）年に気動車の運転を開始したのですが、市内中心部が復興するに従って官公庁が移転。広島電鉄皆実（みなみ）線・宇品線やバスなどの利便性の高まりにより、旅客数や貨物は次第に減少していきました。

新国道2号バイパスが開通した1966（昭和41）年12月、上大河（かみおおこう）駅～宇品駅の旅客営業を廃止。1972（昭和47）年4月には残っていた広島駅～上大河駅の旅客営業も廃止され、1日1往復のみの貨物専用線となりました。さらに取扱貨物量も徐々に減少していき、ついに1986（昭和61）年9月30日、宇品線は全線廃止され、92年の歴史に幕を閉じました。

戦前から戦後へと激動の時代を走り抜けてきた宇品線ですが、現在宇品線が通っていた場所は数点のモニュメントが残るのみとなっています。

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