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広島花崗岩とは

2016(平成28)年に日本地質学会が全国47都道府県それぞれに特徴的に産出する、または発見された岩石・鉱物・化石を一つずつ「県の石」として選定しました。その際、広島県の岩石として選ばれたのが「広島花崗岩」です。

中央構造線のすぐ北にある西南日本内帯の山陽帯と称される岩石区に分布する花崗岩の中で、白亜紀末期の8500万年前ごろに貫入した珪長質(けいちょうしつ)の深成岩(しんせいがん)が「広島花崗岩」とされます。

広島花崗岩は中央構造線の北側に分布している大量の花崗岩の一部

「広島花崗岩」という専門用語が付けられるほど、広島県には花崗岩が多くあります。近年の豪雨災害などによる土石流被害において、テレビや新聞などで花崗岩や花崗岩の風化残積土であるまさ土(つち)を認識した人も多いでしょう。

確かに広島県に花崗岩が多いのは事実ですが、同じような白亜紀後期(1億年~6600万年前)の花崗岩は、日本列島を縦走する中央構造線の北側に沿って、近畿~中部地方にも大量に分布しています。瀬戸内海は陸ではないため地質図にすると目立ちませんが、中央構造線の北側のゾーンに沿って海底にもずっと花崗岩が存在しています。広島県はこれと同じゾーンに位置しており、なおかつ地上部分に見えている面積が多くなっています

広島の花崗岩は県の面積率の約41%を占める

地質図から広島県に占める各地質の面積割合を求めると、花崗岩が約41%となります。花崗岩の面積率約41%というのは、全国的にもトップレベルだと考えられます。

地質図を見ても県全体に花崗岩が広がっていることが確認できます。花崗岩はマグマが地下深くで冷え固まった深成岩。一方面積の約33%を占める流紋岩(りゅうもんがん)は、地表に噴出して溜まった火山岩です。

両方とも白亜紀の同時代にできたもので、成分はほぼ同じ。二つを合わせると面積率は約74%にもなります。

広島花崗岩の存在が活断層に関係している

広島県は地震が少ないといわれていますが、それは一要因として活断層が少ないからに他なりません。事実、岡山県と広島県の県境を中心にその両側部分は日本一活断層が少なくなっています。そして、これには花崗岩が関係しています。

広島の花崗岩の地殻が地震を起こす力を吸い取っている?

海洋プレートが海溝からマントルへと沈み込むと、深海底に溜まった海洋粘土などが脱水して、水が地下深部のマントルに供給され、玄武岩のマグマが発生します。これが上がってきて地下で固まり、斑(はん)れい岩(がん)ができます。こうして厚くなった斑れい岩の地殻に次々とマグマが貫入すると、斑れい岩は部分的に融けて、今度は花崗岩のマグマを吐き出します。これが次々に固まっていくことで花崗岩の地殻がつくられていくのですが、今の広島と岡山の県境下には、この花崗岩の地殻が非常に厚く形成されています。

地下深くなると温度は高くなります。硬いガラスが熱で融けるように、岩石を構成している鉱物も温度が高くなると軟らかくなります。軟らかい石は、大きな力で押されても割れずに伸びたり曲がったりします。冷たくて硬い石は力に耐え切れずに割れてずれ、断層活動を起こします。それにより地震が起こるのです。

広島と岡山の両県は硬い岩盤の周りを取り囲む軟らかい岩盤に地震を起こす力が吸い取られていることにより地震が少ないと考えられています。

中国山地に存在する断層は地すべりが起きやすい一面も

ただし中国山地に沿った広島県西部では、古くにできた断層が大量に確認されている事実もあります。白亜紀の地殻変動によって生じた断層部分が谷になり、約7000万年前の粘土を挟んでいます。己斐(こい)-広島西縁(せいえん)断層帯、五日市(いつかいち)断層、安芸灘(あきなだ)断層群、岩国断層帯などがそれにあたります。

一度断層ができてしまうと、断層破砕帯(だんそうはさいたい)に断層粘土が挟まれ、摩擦係数が下がって滑りやすい状態になります。広島県は地震自体は少ないと思われていますが、水を通しやすい性質を持つまさ土が広く分布しているため、地震動によって地すべりなどの斜面崩壊を起こす危険性を秘めているのです。

中国山地に存在する断層は地すべりが起きやすい一面も
国土地理院色別標高図を元に作成

西中国山地に平行して、いくつもの活断層が走っています。

広島は花崗岩の影響で水はミネラルの少ない軟水

水には主にカルシウムイオンとマグネシウムイオンが含まれていますが、広島県の大地は、花崗岩と流紋岩の成分が非常に強く、ミネラル分があまり含まれていません。ミネラルがあまり含まれていない天然水を軟水といいます。

安山岩類はミネラルを多く含んでいる石ですが、広島県での割合は約6%。硬水の元になる石灰岩は、約 3.7%となっています。日本は元々軟水が多いのですが、広島県は花崗岩の影響もあり、その割合が顕著です。

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<コラム>
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