京料理に欠かせない京野菜
京野菜(京の伝統野菜)は現存するものが35品目あり、うち14品目は「ブランド京野菜」と呼ばれています。
【京野菜】九条ねぎ
とくに古い歴史を持つのは「九条ねぎ」です。711年に伏見稲荷大社が創建された際、大社への神饌(しんせん)として栽培されたのがはじまりとされ、南区の九条で作られていたことからこの名がつきました。葉の内部には甘みのもととなるぬめりが豊富に含まれており、薬味や鍋物、あえものなど幅広い用途で親しまれています。
【京野菜】賀茂なす
このほか知名度が高いのは、北区上賀茂を中心に栽培されている「賀茂なす」で、大型で丸く、ずっしりとした重量感があることから「なすの女王」とも称されます。肉質も硬く締まって歯ごたえがよいものです。定番の食べ方は揚げて味噌をつける田楽でしょう。
【京野菜】聖護院だいこん
「聖護院(しょうごいん)だいこん」も知名度の高い京野菜です。これは重さ3~4㎏にも成長する丸型の大根で、19世紀前半に左京区の聖護院に住んでいた農家が、尾張国(現愛知県)の国元から譲り受け栽培をはじめたとされています。柔らかくも煮崩れしにくく、おでんなどの煮物に最適です。
【京野菜】聖護院かぶ・すぐき菜
また同じ地名を冠した野菜に「聖護院かぶ」があります。みずみずしく緻密な肉質を持つこのかぶは千枚漬けの原材料として知られています。
「すぐき菜」もかぶの一種で、約300年前に上賀茂で栽培がはじまったと伝わっています。漬物はコクのある酸味が特徴で、最高級の逸品として御所にも献上されました。
【京野菜】鹿ケ谷かぼちゃ
「鹿ケ谷かぼちゃ」は、19世紀初めに東山区の粟田口の農家が旅先の津軽からかぼちゃの種子を持ち帰り、左京区鹿ヶ谷の農家に分けたのがはじまりとされています。ひょうたん型の独特な形をしており、その外見のユニークさから観賞用としても愛好されています。
【京野菜】堀川ごぼう
左京区でおもに栽培されている「堀川ごぼう」は長さ約80㎝、直径5~6㎝と通常のごぼうよりずっと太く重いものです。見た目はほぼ木です。中心は空洞になっており、そこにミンチやすり身などをつめて調理されることが多くなっています。
おもな京野菜とその産地
ここに記されている以外にもブランド品目があります。京都府では「京野菜や果物など歴史に磨かれた特徴ある農林水産物の中でも、品質的・量的に特に優れたもの」をブランド京野菜と認証しています。認証された農林水産物には、それを示す「京のブランド産品マーク」が貼られています。
京野菜の発祥の地・聖護院村
京都大学附属病院のある一帯は、明治時代まで聖護院村と呼ばれ、森が広がっていました。村名の由来は今もこの地にある修験道の寺・聖護院です。
聖護院村は、その名のとおり京野菜の聖護院だいこん、聖護院かぶの発祥の地。明治時代に土地開発が進むと農地が減り、聖護院かぶのおもな産地は昼夜の寒暖差が大きい亀岡市に移りました。聖護院だいこんも亀岡市のほか城陽市、久御山町などで生産されるようになっています。
ちなみに、京都みやげの定番「聖護院八ッ橋」もこの村で誕生しました。
京野菜が彩る京料理
京料理の特徴は、四季折々の食材を丁寧に味つけし、彩りも鮮やかに盛りつけること。これは公家社会の社交儀礼の中で発達した「大饗料理(だいきょうりょうり)」や、寺院で生まれた「精進料理(しょうじんりょうり)」、茶道の世界から派生した「懐石料理(かいせきりょうり)」などが融合して生まれたといわれています。
繊細で上品な味わいの京料理
また、だしを用いながら、食材が持つ本来の風味を活かす調理法が基本とされ、その繊細で上品な味は時代を超えて人々に愛されてきました。そんな歴史の中で育まれ、食文化を支えてきたのが京野菜なのです。
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Part.1 地図で読み解く京都の大地
・京都府の4地形区と断層/京都盆地とその出入り口(逢坂と大山崎)
・琵琶湖疏水の秘密/洛中と洛外を隔てるおどい
・観光のメッカ東山の地形(地獄の入り口六道珍皇寺)
・失われた巨椋池/天橋立はなぜあのような地形になったのか
・舞鶴が重要港湾となった地形的な秘密
・霧のまち亀岡(亀岡盆地)
…などなど京都のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 京都を駆ける充実の交通網
・山城盆地を通る街道(東海道、中山道の終着地)
・若狭と京都を結ぶ「鯖街道」
・日本初の一般営業用電車が通った京都市電
・京都鉄道博物館
・梅小路
・京都の私鉄〇〇な阪急
・大赤字から復活した京都丹後鉄道
…などなど京都ならではの交通事情を網羅。
Part.3 京都の歴史を深読み!
・丹後に一大勢力が存在した証拠 三大古墳に埋葬された人々
・古代日本を支えた渡来人と京都の関係
・なぜ京都は都になったのか 恭仁京~平安京までの変
・南北朝動乱の始まり 笠置山の戦い
・信長、光秀、秀吉…みんな京都で死んだ
・幕末の騒乱の舞台となった京都
・近代化にいち早く着手!日本初の博覧会は京都の寺で開かれた
…などなど、激動の京都の歴史に興味を惹きつける。
Part.4 京都で育まれた産業や文化
・シンボル京都タワーと近代建築
・学問の都・京都の大学
・京料理とそれを支える伝統野菜
・「丹波」ブランドをめぐる攻防
・日本映画と京都
・「女酒」伏見の酒蔵
・王城の裏鬼門「男山」と岩清水八幡宮
…などなど京都の発展の歩みをたどる。
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