京都博覧会の礎となった西本願寺で行われた日本初の博覧会
1871年、日本で初めての博覧会が京都で行われました。場所は西本願寺。当時の知事・長谷信篤は、京都を本拠地にしていた豪商の三井八郎右衛門と金融業を営んでいた小野善助、薫香商(くんこうしょう)・鳩居堂(きゅうきょどう)の熊谷久右衛門の3人に主催させました。
西本願寺で開催された博覧会の内容とは?
博覧会場には、武具や古陶磁器など日本のもの166点、中国の古銭や書画131点、西洋の汽車の模型や拳銃など39点が陳列されました。近代的な品々を展示して広く知らしめることでしたが、実態は骨董品の展示会に近いものだったといわれます。
それでも物珍しさからか、1カ月の開催期間で1万人以上がつめかけて大盛況となります。この成功を受けて京都博覧会社が設立され、1872年に第1回京都博覧会として西本願寺、建仁寺、知恩院の3カ所で開催されました。
陳列されるものは農産物やタバコなどの嗜好品、水晶などの鉱物の類、工芸細工などに変わりました。博覧会らしいものとして、足踏み式の米播き機も並んだといわれます。
京都博覧会は大盛況!
第1回京都博覧会は3カ月で約4万人が訪れ、大成功を収めました。第2回の会場は御所と仙洞御所、第3回は大宮御所を追加するなど規模を拡大し、1928年までほぼ毎年開催されました。
また、明治政府が主導する第4回内国勧業博覧会は、1895年に岡崎公園で開催されました。それまでの3回は東京で開催されていましたが、京都が強い誘致運動を行って実現したものです。
さらに、1915年には大正天皇の即位を祝う大典記念京都博覧会が、1928年には昭和天皇の即位を祝う大礼記念京都大博覧会が開催されました。とくに後者は約318万人の入場者数を記録しています。
この年をピークに博覧会への熱は衰えていきますが、工業化の推進や商業や観光のにぎわいを取り戻すなどの目的は果たされたのです。
京都博覧会は都をどりのルーツ
春の風物詩「都をどり」のルーツは第1回京都博覧会にあります。第1回京都博覧会では、外国にならって「附博覧(つけはくらん)」と呼ばれる客を呼び込むための娯楽が企画されました。
その中に、三世井上八千代(いのうえやちよ)の振り付けによる芸舞妓の舞踊公演があり、それが都をどりにつながりました。艶(あで)やかな芸舞妓の群舞の評判は遠く外国まで伝わったそうです。
附博覧ではほかに、知恩院三門上での煎茶席、建仁寺での抹茶席、鴨川での花火大会などが催されたといいます。
京都博覧会が寺院や御所で開催されていた理由
ところで、なぜ博覧会場が寺院や御所だったのでしょうか。おそらく京都には、ほかに人がたくさん集まれる適当な場所がなかったのでしょう。元来、寺院は多くの参拝者を受け入れており、門前には市も立っています。
近年、京都では社寺の境内を使ったイベントなどが多く開かれていますが、同じような発想かもしれません。
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・琵琶湖疏水の秘密/洛中と洛外を隔てるおどい
・観光のメッカ東山の地形(地獄の入り口六道珍皇寺)
・失われた巨椋池/天橋立はなぜあのような地形になったのか
・舞鶴が重要港湾となった地形的な秘密
・霧のまち亀岡(亀岡盆地)
…などなど京都のダイナミックな自然のポイントを解説。
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・山城盆地を通る街道(東海道、中山道の終着地)
・若狭と京都を結ぶ「鯖街道」
・日本初の一般営業用電車が通った京都市電
・京都鉄道博物館
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・大赤字から復活した京都丹後鉄道
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Part.3 京都の歴史を深読み!
・丹後に一大勢力が存在した証拠 三大古墳に埋葬された人々
・古代日本を支えた渡来人と京都の関係
・なぜ京都は都になったのか 恭仁京~平安京までの変
・南北朝動乱の始まり 笠置山の戦い
・信長、光秀、秀吉…みんな京都で死んだ
・幕末の騒乱の舞台となった京都
・近代化にいち早く着手!日本初の博覧会は京都の寺で開かれた
…などなど、激動の京都の歴史に興味を惹きつける。
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・学問の都・京都の大学
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・「丹波」ブランドをめぐる攻防
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・「女酒」伏見の酒蔵
・王城の裏鬼門「男山」と岩清水八幡宮
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