天橋立は、丹後半島の東側から砂礫（されき）を運んできた宮津湾の海流と、野田川からの流れによる阿蘇海の海流とがぶつかり、砂礫が海中にほぼ真っすぐに堆積したことで生まれました。

その過程は大きく２段階あります。２万年前までさかのぼると、現在の宮津湾にあたる一帯は陸地でした。その後、地球温暖化により北半球の巨大な氷床の融解がはじまりました。これをきっかけに「縄文海進（じょうもんかいしん）」と呼ばれる海水面の上昇が6000年前まで続き、宮津湾が誕生します。以降、海流により湾の海底に砂州がつくられていきました。

平安時代に小式部内侍（こしきぶのないし）が「大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立」と詠んだことからわかるように、天橋立は1000年前からすでに名勝として知られていました。

室町幕府３代将軍の足利義満は天橋立を６度も訪れ、大絶賛したといいます。また、室町時代の水墨画家・雪舟は晩年に現地まで足を運び、「天橋立図」を描いています。

天橋立には、現在約5000本の松並木が生えています。当然のことながら、海水ではなく地表下60～120㎝より深い場所にある淡水を吸い上げて育っています。周囲が海である砂州の地下に淡水が滞留するのはなぜでしょうか。

天橋立の地下には、砂層と粘土層の間に地下水を蓄える帯水層が存在します。地下水は雨水が地下に浸透した淡水と、砂層から浸入した海水の２種類があります。海水は淡水よりも比重が大きいため両者は混ざり合いません。海水が淡水の下にもぐりこむことで、浅い層は淡水に、深い層は海水とに分かれて存在するのです。

砂州内に真水の地下水が海水と混じることなくレンズ状に存在する現象は、「ガイベン・ヘルツベルクの法則」で説明できます。地質からひもといてみると、天橋立は条件が奇跡的に重なって生まれた絶景だとわかります。

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