目次
【埼玉の歴史】貝塚から知る縄文時代
やがて、氷河期が終わると地球規模で環境が激変します。気温の上昇にともない海面は現在より5mほど上昇(縄文海進(じょうもんかいしん))し、今にいう関東平野に相当する部分は海面下に沈みました。南関東には「奥東京湾」と呼ばれる広大な湾が形成され、埼玉県南部が海岸線となりました。
関山貝塚(せきやまかいづか)(蓮田市)や水子(みずこ)貝塚(富士見市)といった縄文時代前期の遺跡から大規模な貝塚が見つかっており、ハイガイやヤマトシジミなどの貝殻が出土していることからも、この周辺が海岸に近かったことが推測できます。
【埼玉の歴史】稲作文化が伝来した弥生時代
弥生時代に入る頃には埼玉全域が陸地化し、1世紀には稲作文化が伝来しました。保存可能な食糧が安定して生産されるようになると村に富が集積され、次第に権力構造が生じ権力争いへと発展します。
埼玉県のおもな弥生遺跡の分布
定住と稲作の弥生時代らしく、遺跡は台地のヘリや低地に多く残っています。実際、県域の弥生遺跡は、県南部に広がる武蔵野台地や大宮台地、県央の比企丘陵、県北の松久丘陵といった丘陵地帯(台地)、県北の熊谷市〜深谷市周辺の低地に数多くあります。
【埼玉の歴史】武蔵国の争乱とヤマト王権
『日本書紀』によると、6世紀には北武蔵(むさし)と南武蔵の勢力のあいだで「武蔵国造(くにのみやつこ)の乱」が勃発したとされています。現在の神奈川県から東京都、埼玉県にまたがる広大な地域を管轄下に置く「武蔵」の首長(国造)の地位を巡る争乱で、畿内のヤマト王権と結びついた北武蔵の勢力が勝利しました。
この結果、534(安閑(あんかん)元)年に安閑天皇が笠原直使主(かさはらのあたいおみ)を武蔵国造に任命したのです。
ヤマト王権は、自分たちの支配地域には前方後円墳の築造を認めていましたが、埼玉県域ではこの頃から畿内に匹敵する規模の前方後円墳が現れます。
そして、律令政府が中央集権化を図る過程で「武蔵国」が設置されるのでした。なお、武蔵国の国府は多摩郡(東京都府中市)に置かれました。
ヤマト王権の勢力の衰えと地方政治の乱れ
武蔵国は中央との結びつきが深く、中央から下向して土着する氏族も多くありました。ですが、時代を経るにつれて中央政権の権威が低下していき、9世紀末頃になると地方政治は混迷します。武蔵国の治安は「凶猾(きょうかつ)党を成し、群盗(ぐんとう)山に満つ」(『日本三代実録』清和天皇、巻五)と評されるほど悪化してしまうのでした。
さきたま古墳公園
- 住所
- 埼玉県行田市埼玉、渡柳、佐間、堤根地内
- 交通
- JR高崎線行田駅から行田市内循環バス観光拠点循環コース左回りで15分、埼玉古墳公園前下車すぐ
- 料金
- 入園料=無料/さきたま史跡の博物館入館料=大人200円、高・大学・専門学校生100円/
【埼玉の歴史】県域を自治した北武蔵の武士団
こうした状況で、武装した独立自治の集団が台頭してきました。そのうち有力だった組織は在地領主として成長し、「武蔵七党(むさししちとう)」と呼ばれた武士団を形成し、彼らは北武蔵を根拠地としました。
彼ら中小の独立した武蔵武士集団は、源頼朝が挙兵するとこれに従い、平清盛父子による伊勢平氏(いせへいし)政権を打倒しました。鎌倉幕府成立後、武蔵武士からは幕府の御家人や執権北条氏の御内人(みうちびと)となる者も出て、関東に確固たる地位を築いていくのでした。
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