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福岡の祭り:博多祇園山笠(毎年7月1~15日開催)
「おいさ、おいさ」と威勢の良い掛け声で山が走る博多祇園山笠は毎年7月1~15日に開催される祭礼。7基の舁(か )き山と14基の飾り山が造られ、飾り山は10mを超す壮麗ないで立ちで1日からお披露目して市内各所に祭りの開始を伝え、舁き山は10日から実際に山を舁き始めます。祭りを牽引するのは舁き山を擁する流(ながれ)で千代・恵比須・西・東・土居・大黒・中洲の7つがあります。流は複数の町を束ねる組織であり、その年の当番町が行事を取り仕切ります。
スケジュールは主要なものだけでも、1日注(し)連め下ろし・飾り山笠御神入れ・当番町お汐井(しおい)取り、9日全流お汐井取り、10日流舁(ながれが)き、11日朝山・他流舁き、12日追い山ならし、13日集団山見せ、14日流舁き、15日追い山と多岐にわたり、山笠が動くのは10~15日の間です。クライマックスは15日の追い山で、午前4時59分、舁き手の男たちの掛け声とともに山笠が櫛田神社に駆け入ったのち、薄明のなかを5km近く疾駆するさまは威勢に満ち、しばしば「勇壮」と表現されます。
博多祇園山笠の起源と歴史
起源については諸説ありますが、仁治2(1241)年に承天寺の開山・聖一国師(円爾:えんに)が疫病退散のため施餓鬼棚(せがきだな)に乗り博多の町に水を撒いたのが始まり、と現在では主に伝えています。
明治6(1873)年、博多松囃子と同様に催行を禁止され、明治16(1883)年に再開にこぎつけたのですが、その後も山笠が電線と接触する、半裸の男たちが練り歩くのは野蛮である、と警察から難色を示され続けました。このため、山笠を低く仕立てる、舁き手も水法被をまとうなど、許可を得るため苦慮しています。
博多祇園山笠は博多の生活に今も底流
なお、明治31(1898)年に警察に禁止され、何度も交渉して条件つきでようやく許された際、地元の新聞では「博多山笠は建設の許可を得ると共に各当番町は勇みに勇みて日常の職業をも休み目下其の準備中」と相当に浮き足だった様子を報じており、博多の人々にとってどれほど切実な問題だったかが伝わってきます。
博多の町は昭和41(1966)年に町域と町名が大幅に変更され、従来の町組織は行政上はなくなったものの、山笠の組織単位として大部分が継続し、博多の自治活動や近所付き合いに底流するものとして今も息づいています。
福岡の祭り:筥崎宮放生会(毎年9月12~18日開催)
筥崎宮放生会(はこざきぐうほうじょうや)は毎年9月12~18日に福岡市東区の筥崎宮で行われる祭礼です。隔年で神幸が行われており、神幸の年は12日に3基の神輿が地域をめぐって浜の頓宮(とんぐう)まで渡御、14日に本宮に還御します。期間中、参道には約500軒の露店が建ち並び、ちゃんぽん(ビードロ)・新ショウガなどの放生会名物が売り出されます。また放生会の土産話として見世物小屋、お化け屋敷の体験を語る人も多く、近年めずらしくなったこれらも放生会名物として現存しています。
筥崎宮放生会の歴史
筥崎宮は延長元(923)年、穂波郡の大分宮(現在の飯塚市にある大分八幡宮)から遷座したと伝えられます。放生会は殺生を戒めて捕まえた獲物を野に放つ仏教色の強い行事で、8世紀に宇佐神宮で始まり、全国の八幡宮に広まったとされます。筥崎宮での放生会の始まりは明確ではありませんが、11世紀末には記録に現れています(大江匡房(まさふさ)『筥崎宮記』)。
大正時代頃までは幕出しといい、博多の人々が鍋・釜・食料・酒などを詰めた長持ちを抱えて箱崎の松原に繰り出し、幕を張って酒宴を催していました。この幕に女性たちは新調した着物をかけて自慢し合ったといいます。
福岡の祭りは季節の風物詩として親しまれている
三大祭りは、春のどんたく、夏の山笠、秋の放生会ともいい、しばしば風物詩として語られます。近年は9月でも猛暑が続くことも多く「もう放生会なのにまだ夏みたいやねえ」と苦笑まじりに語られることもありますが、今も祭りの訪れと季節感が結びついていることの裏返しだといえるでしょう。
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