アケボノゾウの化石は日本各地で見つかっていますが、埼玉ではほぼ完全形というべき貴重な化石が発見されています。

1975（昭和50）年、笹井ダムの上流、狭山市の入間川左岸にある高さ約８mの崖にある約170万年前の地層から、アケボノゾウの臼歯と骨格の一部の化石が見つかりました。

これ以後、調査が進められた結果、1985（昭和60）年までに、ほぼ一体分となる骨格化石74点が発掘されました。それまで石川、長野、神奈川などで臼歯ほか部分的な化石は発見されていましたが、頭部を除くほぼ全体の化石が発見されたのは、これが全国で初めてのことでした。

さらに、1991（平成３）年には、入間川河床（入間市）で約150万年前のアケボノゾウの足跡化石が見つかっています。

発見時は、台風による大雨と秋の長雨で入間川が増水し、河床の砂利が洗い流され、その下にあった地層が露出していました。そこをたまたま調査していた化石発掘調査団のメンバーが、足跡化石と思われる直径30㎝、深さ5〜10㎝ほどの丸い凹みを発見。その後の確認調査により、全国で５例目、関東では初めてとなるアケボノゾウの足跡化石であることが判明したのでした。

また、化石は約150万〜100万年前に堆積された礫や砂、シルト（沈泥）、粘土からなる 仏子層（ぶしそう）と呼ばれる地層で見つかっています。これらの地層は、入間川河床や近くの丘陵に露出しています。

入間市博物館発行の『改訂版　入間昔むかしアケボノゾウの足跡』（2003年）によれば、これまでに入間川沿いの８カ所からアケボノゾウの化石が産出しており、同じ仏子層からは植物や昆虫の化石も多く見つかっています。

太古、入間川沿いの狭山〜入間地域は海が入り込んだ湿地帯で、そこにはメタセコイアやオオバタグルミ、エゴノキ、ハンノキなどが生い茂った大森林が広がり、たくさんのアケボノゾウが暮らしていました。いわば埼玉は、日本有数の「アケボノゾウのふるさと」ということができるのです。

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