博多の歴史と豊臣秀吉ゆかりの地
一方、豊臣秀吉と茶の湯は深い縁があります。豊臣秀吉の陣営に近い箱崎の松原ではたびたび茶会が開かれました。町割がはじまった天正15(1587)年6月11日の翌々日は「萱葺(かやぶき)座敷」風の数寄屋で津田宗及の、翌14日には箱崎灯篭堂で千利休の茶会がありました。灯篭堂は現在、筥崎宮近くの恵光院に移築されています。
ついで18日は松原の夷堂近くでも茶会があり、このとき利休は松の枝に小釜をかけて松葉で湯を沸かしたとされます。その跡地は今日九州大学医学部の構内となり、現地にその跡を示す石碑が建っています。
博多の歴史に色濃く残る再生と復興のシンボル・豊臣秀吉
町割による復興後も、博多町衆の豊臣秀吉への報恩の思いは長く続きました。ゆかりの深かった神屋宗湛は屋敷内に社殿を建てて豊臣秀吉を祀りました。社宝として博多町割に用いた間竿・豊臣秀吉から拝領した「夕ざれにたぞやすずろに」の和歌・桐紋金蒔絵の塗椀、および豊臣秀頼8歳の自筆神号「豊国大明神」一幅が納められていました。これらは昭和20(1945)年の空襲で焼失しますが、昭和51(1976)年に再興されました。現在のご神体は名人と呼ばれた博多人形師小島与一の遺作「太閤さま」です。
昭和20年の博多祇園山笠は戦災のため中止となりましたが、翌年には「第1回奈良屋復興祭」として復活しました。物資不足のこのとき、子供山笠はベニヤ板に描かれた太閤秀吉でした。400年前、戦乱で焼け野原となった博多の町を復興した豊臣秀吉は、このとき博多の再生と復興のシンボルとして町なかを駆け巡ったのでした。
『福岡のトリセツ』好評発売中!
福岡県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。福岡県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!
●収録エリア
福岡県全域
【注目1】地図で読み解く福岡の大地
「筑紫次郎」と呼ばれた暴れ川・筑後川の流域に豊かな暮らしと利水事業をもたらした四大堰とは?、約3000万年前の古第三紀漸新世の海成層「芦屋層群」の成り立ち、福岡唯一のカルスト台地「平尾台」の最深部に迫るなど、福岡のダイナミックな自然のポイントを解説。
【注目2】福岡を走る充実の交通網
全国で唯一本州を起点としない電車&バス「西鉄」はどうやって誕生したか?、水陸兼用で日本初の国際空港だった雁ノ巣飛行場、福岡を走る在来線の一部は石炭を運ぶために作られた!?、平成筑豊鉄道のユニークな駅名のお話…などなど、意外と知られていない福岡の交通トリビアを厳選してご紹介。
【注目3】福岡で動いた歴史の瞬間
日本最古の稲作遺跡「板付遺跡」、金印が出土した「志賀島」、世界遺産に登録され神宿る島として一躍有名になった「宗像・沖ノ島」、女王卑弥呼が君臨した邪馬台国かもしれない「伊都国」、新元号・令和の典拠となった万葉集が詠まれた「太宰府」など、福岡は歴史ファンにはたまらないロマンの地。福岡の歴史は知れば知るほど面白い。
『福岡のトリセツ』好評発売中!
※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!