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博多の歴史~一大地方都市になったのは豊臣秀吉のおかげ?~

まっぷるトラベルガイド編集部

更新日: 2024年1月22日

博多の歴史~一大地方都市になったのは豊臣秀吉のおかげ?~

福岡の玄関口、博多。博多駅にほど近い祇園や呉服町周辺は碁盤の目のように整備された町割になっています。この基礎を作った人物こそ太閤・豊臣秀吉なのです。

博多の歴史に豊臣秀吉あり! 焦土となった博多を復興

福岡県民は福岡市を「博多」と呼ぶことが多くあります。福岡は行政の地名、生活感覚では博多です。「福岡」が黒田氏にはじまる「新参」なのに対し、自治都市博多の歴史は古くあります。16世紀のイエズス会宣教師の報告書には「Facata」の名がみえます。

豊かな貿易都市でもあった博多は、戦国大名の争奪の地ともなりました。戦国時代の末期には大友・筑紫・秋月・龍造寺・島津氏の勢力が入り乱れ、町はその都度焼失と復興をくり返しました。最終的には薩摩の島津氏が占領しますが、九州平定をめざす豊臣秀吉勢の来襲を知り、天正14(1586)年8月に博多を焼き払って撤退しました。翌年、島津氏を降伏させた秀吉は凱旋の途中、筥崎宮に滞在し、焦土となっていた博多の復興を黒田官兵衛(如水)に命じました。

博多の歴史と豊臣秀吉①:街並みを整備! 「太閤町割」

官兵衛の家臣、久野四兵衛は銭を並べて具体的に町割を説明し、豊臣秀吉も納得したとされます。これがいわゆる「太閤町割」です。

この時、豪商神屋宗湛(かみやそうたん)嶋井宗室をはじめ博多の町衆も復興に参加しました。測量に使ったとされる長さ約2mの間竿(けんざお)が櫛田神社と筥崎宮に伝わっています。町割の結果、これまで息浜(おきのはま)と博多浜に分かれていた町はひとつに統合され、今の大博通りにあたる市小路を中心に格子状の整然とした街並みが整備されました。博多山笠の「流(ながれ)」は、この時にできた町の単位です。近世都市博多の基礎を作ったのは豊臣秀吉なのです。

博多の歴史と豊臣秀吉②:「定」を発布し町を活性化

豊臣秀吉は戦乱で荒廃していた櫛田神社に社殿を寄進し、九カ条からなる「定(さだめ)」を発布して自由な商売を保証、町の活性化も推し進めました。もっともその背後には計画中の朝鮮出兵の思惑があり、当初秀吉は博多を九州の統治と朝鮮出兵の政治・軍事拠点とする予定でした。結果的にこれは当時僻地の寒村だった肥前名護屋に変更されました。その理由として名護屋浦の水深・現地の造船技術・水先案内人の存在などが指摘されていますが、茶人でもある神屋宗湛が秀吉に名護屋を推挙したのが大きいとされます。神屋宗湛はそれまで17年間も唐津を拠点に貿易に携わっており、現地の情報は秀吉に有益だったのです。

ちなみに天正20(1592)年10月、神屋宗湛は秀吉を自宅に招き盛大な接待と茶席を設けました。豊臣秀吉は機嫌よく茶室の作りなどの助言をして「このような指南は宗易(利休)も(津田)宗及も教えてはくれないぞ」と語ったそうです。帰路、神屋宗湛が見送ると豊臣秀吉は住吉村の河原で乗物を止め、先ほどとは一転して「銀子はいくらでも貸すから名護屋で商いをしないか」など生臭い話を持ちかけています。

博多の歴史と豊臣秀吉③:軍事道路「太閤道」の建設

豊臣秀吉の土木好きは有名です。大坂城をはじめ、京の聚楽第(じゅらくだい)・方広寺大仏殿など、巨大建築を次々に手がけています。一方で道路作りにも熱心で、彼が出向いた先々で大がかりな道路建設が行われました。これが今日にまで伝わる「太閤道」です。

博多付近では、天正20年正月に名島城主小早川隆景が城下近くの多々良川河口の2か所に架橋を命じ、長さ100間(約180m)と53間(約96m)の橋を2か月たらずの突貫工事で完成させました。京の三条大橋が56間であったから、当時としては国内屈指の長大橋といえます。完成の翌月、豊臣秀吉の軍勢はこの橋を渡って肥前名護屋に出陣しており、橋は博多から肥前名護屋城につづく軍事道路・太閤道の起点でもありました。

道はこの先、箱崎~博多を一直線に貫通したのちに福岡城が築かれる赤坂山を横切り、早良をへて長垂(ながたれ)山を越えています。当時例のない大規模な道路建設は「太閤道」として記憶され、江戸時代の福岡城下町絵図や貝原益軒(かいばらえきけん)著『筑前国続風土記』に詳しく記されています。沿道には豊臣秀吉が休んだ「関白塚」や水を飲んだ「太閤水」、休憩した「茶屋跡」の伝承地が残ります。

博多を通る太閤道と近世の唐津街道の位置関係を示します。太閤道は筥松小学校付近から西門橋へ直進し、その後整備された唐津街道は筥崎宮の前から県庁西側を通過します。
(太閤道伝説を歩く(福岡・弦書房)より)

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