絶滅動物・パレオパラドキシアは秩父盆地産化石の代表格!
秩父盆地に産出される化石の代表格といえば、1972(昭和47)年、秩父市大野原(おおのはら)で地元の高校生によって全身骨格が発見されたパレオパラドキシアでしょう。
絶滅動物・パレオパラドキシアとは?
パレオパラドキシアは、約1500万年前に生息していた海棲哺乳類で、体長は1.5〜2.0mくらい。柱を束ねたような奥歯や厚い板状の胸骨が特徴で、見た目はカバのようだったと考えられています。現生するゾウやジュゴン、マナティーと近い仲間と見られ、絶滅してしまった束柱目(そくちゅうもく)というグループに属します。
名前は「昔の(パレオ)矛盾した(パラドキシア)生き物」という意味で、頭骨や歯はジュゴンなどの水棲生物に似ているのに、ゾウなどの陸上動物に似た丈夫な手足をもっていることから名づけられました。
また、何を食べていたのかはよくわかっていませんが、貝などを食べていたとも、海草を食べていたともいわれています。
絶滅動物のパレオパラドキシアの貴重な全身骨格化石は秩父盆地で産出された
パレオパラドキシアの化石は、日本〜北アメリカ大陸の太平洋側で産出しますが、国内の約50標本のうち、20標本が埼玉県で見つかっています。しかも、世界で9標本しか出ていない全身骨格のうち、2標本(秩父市大野原産、および小鹿野町般若(おがのまちはんにゃ)産)が秩父盆地産というから驚きです。
全身骨格2体は1999(平成11)年に県指定天然記念物に指定され、2016(平成28)年にはパレオパラドキシアの化石や秩父の露頭などが「古秩父湾堆積層および海棲哺乳類化石群」として国の天然記念物に指定されています。なお、埼玉県立自然の博物館(長瀞町)では、実物の化石や復元骨格模型が展示されています。
絶滅動物・パレオパラドキシア化石の秩父盆地での発見場所
赤色(文字は白色)で示した6地点で見つかったパレオパラドキシア化石6体が、国の天然記念物に指定されています。
1951(昭和26)年に秩父市寺尾の荒川河床で初産出したのを皮切りに、1972(昭和47)年には秩父市大野原築瀬で全身骨格化石(世界で2例目)が見つかりました。また、1981(昭和56)年には秩父2体目の全身骨格化石が小鹿野町般若で採取されました。
絶滅動物・カルカロドン・メガロドンとは?
秩父からは、湾周辺に生息していたカルカロドン・メガロドンの化石も見つかっています。
カルカロドン・メガロドンは巨大な肉食性のサメで、秩父市久那(くな)の巴川(ともえがわ)では、5本の保存状態のよい歯の化石が見つかっています。
また、深谷市菅沼の荒川川床の比企層群土塩層(ひきそうぐんつちしおそう)と呼ばれる約1200万年前の地層からは、全部で73本の歯の化石が発見されました。この化石は狭い範囲でまとまって見つかっており、同じサメの歯であることがわかりました。ここで発見された歯の大きさを、現存するホオジロザメの歯に当てはめて推定すると、カルカロドン・メガロドンの体長は12mにもなります。
このような海棲生物化石が豊富に見つかっていることは、太古の秩父盆地が豊かな海だったことの証になっています。
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