トップ >  九州・沖縄 > 福岡県 > 

宗像大社の宗像三女神への信仰は今も続いている

本遺産群は、航海安全を祈願する信仰が宗像地域において今も続いており、その起源が少なくとも東アジアにおいて海を介した交流が活発であった古代に遡ることができるという意味で、極めて価値が高いと認められています。

航海安全から、今では交通安全の守り神として多くの参拝者を集めているのはもとより、“一木一草一石たりとも持ち出してはならない”、“島で見聞きしたことを口にしてはならない”などの沖ノ島の禁忌が今も守られていること、沖ノ島近海で漁をする漁師は、獲れた魚を“献魚”として沖津宮に捧げることなどの伝統が守られています。また、地域の人がお宮の近くを通る際に、神殿の方角に向かって一礼する姿を見かけることもあります。このように、宗像三女神への崇拝は今も生きており、つまりは宗像の人々の心の中に、宗像三女神は生き続けている、とも言えるでしょう。

宗像大社沖津宮の沖ノ島で発掘された大規模な祭祀遺跡

沖ノ島での古代祭祀は、4世紀後半、ヤマト王権と朝鮮半島の百済との交流が活発化したことを契機に始まりました。沖ノ島に残された他に類を見ない大規模な祭祀遺跡は、海を渡らなければ異国とつながることのない日本にとって、交流のための航海がいかに重要なことであったかを教えてくれます。

発掘調査によって見つかった沖ノ島の奉献品の中には、シルクロードを通って運ばれてきたペルシア産のカットガラス碗片をはじめ、金製指輪、金銅製龍頭など、大変貴重な品々が含まれており、約8万点が国宝に指定されています。これらは、宗像大社辺津宮境内の神宝館で見ることができます。
ちなみに、発掘調査は完全に行われてはいないので、“8万点”はまだその一部であることを申し添えておきます。

宗像大社の宗像三女神を崇拝してきた〝神守る島″大島の人々

特筆すべきは、これら貴重な品々が、約1600年にわたって沖ノ島の中で守られてきたことです。これは偏に、宗像三女神を崇拝してきた宗像の、特に大島の人々に依るところが大きいと考えられます。

沖ノ島が“神宿る島”であるならば、大島は“神守る島”とも言えます。大島の人々の沖ノ島への思いや日々の営みは、大島にある「大島交流館」で知ることができます。中でも、展示室には地元のベテラン島民によるボランティアが駐在しており、島の生活や習わし、昔話などを聞くことができます。展示物の解説よりも、そちらの方が面白いかもしれません。だからこそ「資料館」ではなく「交流館」なのです。ただし、話に熱が入りすぎ、帰りの船に間に合わない、などということがないように注意を…。

宗像大社の宗像三女神をなぜ人々は崇敬するようになったのか

また、この奉献品を載せた航海は、縄文時代以来の丸木舟の両側に、高い板を張り付けて波よけとした船が用いられていたといわれています。当然、動力は手漕ぎです。7世紀後半以降の遣唐使の時代になると、板材を組み合わせて作られる、100人以上が乗船可能な船となり、動力も手漕ぎに加えて帆を利用するようになったようです。
しかしいずれにせよ、常に危険とは隣り合わせで、遣唐使もかなりの割合で遭難・漂流した記録が残されています。航海の安全を祈る想いや、無事に帰還できた際の神への感謝から、宗像三女神への崇敬の念が生まれたことは想像に難くありません。

宗像大社

住所
福岡県宗像市田島2331
交通
JR鹿児島本線東郷駅から西鉄バス神湊行きで15分、宗像大社前下車すぐ(辺津宮)
料金
神宝館(辺津宮)=大人800円、高・大学生500円、小・中学生400円/

『福岡のトリセツ』好評発売中!

福岡県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。福岡県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

●収録エリア
福岡県全域

【注目1】地図で読み解く福岡の大地

「筑紫次郎」と呼ばれた暴れ川・筑後川の流域に豊かな暮らしと利水事業をもたらした四大堰とは?、約3000万年前の古第三紀漸新世の海成層「芦屋層群」の成り立ち、福岡唯一のカルスト台地「平尾台」の最深部に迫るなど、福岡のダイナミックな自然のポイントを解説。

【注目2】福岡を走る充実の交通網

全国で唯一本州を起点としない電車&バス「西鉄」はどうやって誕生したか?、水陸兼用で日本初の国際空港だった雁ノ巣飛行場、福岡を走る在来線の一部は石炭を運ぶために作られた!?、平成筑豊鉄道のユニークな駅名のお話…などなど、意外と知られていない福岡の交通トリビアを厳選してご紹介。

【注目3】福岡で動いた歴史の瞬間

日本最古の稲作遺跡「板付遺跡」、金印が出土した「志賀島」、世界遺産に登録され神宿る島として一躍有名になった「宗像・沖ノ島」、女王卑弥呼が君臨した邪馬台国かもしれない「伊都国」、新元号・令和の典拠となった万葉集が詠まれた「太宰府」など、福岡は歴史ファンにはたまらないロマンの地。福岡の歴史は知れば知るほど面白い。

『福岡のトリセツ』好評発売中!

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  九州・沖縄 > 福岡県 >

この記事に関連するタグ