目次
福岡の遺跡から歴史をたどる①:板付遺跡(いたつけいせき)(弥生時代)
福岡市板付遺跡では畔や水路、取排水施設をもつ本格的な弥生時代初期の水田が昭和52(1977)年に発掘されました。
農村の始まりを告げる平面卵形の環濠は、粕屋町江辻遺跡と同様に、竪穴住居などの居住施設全体を外部と区画しました。この時期は新たな石器や墓も現れ、朝鮮半島南部からの文化複合と人を受容した一大転換期となりました。
福岡の遺跡から歴史をたどる②:金印(弥生時代)
紀元前3~2世紀(弥生時代前期末~中期前半)になると、朝鮮系細形青銅器を持つ一部の特別な人々が出現して、国という政治組織ができます。
福岡市金隈遺跡(かねのくまいせき)の甕棺墓(かめかんぼ)群は密集して青銅器を持たない一般人の墓地ですが、福岡市吉武遺跡や宗像市田熊石畑遺跡などでは朝鮮系細形青銅器が見つかっています。
紀元57年に後漢の光武帝(こうぶてい)が与えて江戸時代に志賀島で出た「漢の倭の奴国の王」金印は、国に王がいた証です。この金印奴国王より古い紀元前1世紀の王の墓は、奴国の中心の須玖(すぐ)遺跡岡本地区(春日市)や伊都国(いとこく)の中心の三雲・井原遺跡南小路地区(糸島市)にあって、多量の前漢鏡を持つため、奴国で後漢鏡が集中する須玖遺跡のどこかに金印奴国王も眠っています。
金印は志賀島の海の民が管理して対外交渉の文書を封じたとみられています。
邪馬台国は伊都国の歴代の王を統属し、伊都国に置いて諸国を検察した一大率(いちだいそつ)は、港で中国や朝鮮からの賜物や文書を検(あらた)めました。三雲・井原遺跡番上地区は一大率の候補地で、楽浪(らくろう)土器が集中して石硯(せきけん)も出たことから、対外交渉での文字の使用が考えられます。
福岡の遺跡から歴史をたどる③:苅田町石塚山古墳(古墳時代)
古墳時代の始まりを告げる初期の前方後円墳に、豊前の苅田町石塚山古墳があります。ここから出た「三角縁神獣鏡(さんかくえんしんじゅうきょう)」は、大和王権とのつながりを示し、中・四国や近畿の窓口である豊前の特色をよく示しています。
5世紀には対外交渉・交易の大動脈が高句麗(こうくり)の南下で崩壊し、富国強兵のための新たな技術やそれに伴う横穴系の墓制が流入定着します。筑後の筑紫君(つくしのきみ)一族は新来の文化を消化して玄界灘沿岸地域を押さえ、埴輪の代わりに石を使う九州独特の石人石馬文化を盛行させて、筑紫王権を復興しました。その頂点に立つ筑紫君磐井(つくしのきみいわい)は筑紫・豊・肥に勢力を張りますが、527年に大和王権と戦って敗れました。
九州最大の前方後円墳である八女市岩戸山古墳はこの磐井の墓で、文献が記すように別区があり多くの石製品が墳丘を巡ります。
福岡の遺跡から歴史をたどる④:鴻臚館(飛鳥・奈良・平安時代)
磐井の敗戦後に大和王権が536年に設けた那津官家(なのつみやけ)に始まって、大宰府の設置とともに整備され平安時代には鴻臚館と呼ばれた対外交渉の窓口施設を、『日本書紀』の688年条では筑紫館(ちくしのむろつみ)と記しています。
その場所を中山平次郎は万葉集の和歌から福岡城の中にあったと推定して大正4(1915)年に遺物も採集しました。この説は昭和62(1987)年の平和台野球場の改修工事に伴う発掘調査で証明されました。
鴻臚館は11世紀後半まで続いて、建物は南館と北館に分かれ、多量の瓦や輸入陶磁器などが出て当時をしのばせます。
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